第19次三宅島噴火災害調査

・実施主体名:東京都水産試験場大島分場

・実施工程:平成16年9月13日(月)〜14日(火)

・実施場所:図1に示した25地点で、いずれも水深15m以浅とした。

・具体的な実施内容:
 藻場調査 テングサ漁場25地点について調査を行った。オオブサ(主に潮間帯下部に生育)およびマクサ、オバクサ(主に潮間帯下部以深で、水深15m付近までの範囲)の1m2枠取り調査(1×1m枠)によって着生量を把握し、調査地点毎に作柄評価を行った。評価基準はA級(着生量1,000g以上/m2)、B級(着生量500g以上1,000g未満/m2)、C級(着生量500g未満)とした。
 生物調査 フクトコブシ、サザエ、イセエビともに目視観察のみ行った。
 環境調査 各調査地点付近の土砂の堆積状況を目視観察した。

・結果:
 藻場調査 今回は天候に恵まれ、全島一斉の調査をすることができた。各地点におけるテングサの着生量は図2と表1に示した。オオブサの着生量についてはオオハシが最も多く、A級と評価されたが、北東側のオオブサ漁場ではほとんどがB級で、他のオオブサ漁場ではすべてC級であった。オオブサの藻丈は長いものが多く、おおむね生育状況は良好であった。漁場別では、アカアナとオオハシのオオブサは全体的に良質であったが、他の漁場では繁りがあまり良くなかったり、枯れかかっているのも一部みられた。一方、マクサ、オバクサの着生量は、ジョウネとミツイシではB級であったが、他の漁場ではすべてC級であった。マクサ、オバクサの藻丈は短く、サンゴモ付きも多く、藻質は良くなかった。この時期はテングサの枯渇期であるため、一般に春と比較すると着生量や繁りは悪いことが知られているが、三宅島でも同様であった。
 三宅島ではオオブサが最も高値で取引きされているため、オオブサの生育状況を把握することは非常に重要である。特に、北東側のオオブサはこれまで最高級品とされてきたが、この時期にも関わらずB級であったので、春はおそらくもっと繁りがよかったものと推測される。三宅島はテングサ漁業への依存が非常に高いが、少なくとも本年2月の帰島後、北東側のオオブサだけは漁業として十分期待できると考えられた。また、東側のオオハシは、前回同様に今回もオオブサの着生量が最も多く、この漁場も北東部とともに十分期待できると考えられた。
表1 テングサ枠取り調査結果

調査地点                  オオブサ              マクサ・オバクサ
                   水深(m) 採集量(g) 評価    水深(m) 採集量(g) 評価

メガネイワ                                                  C
阿古カマニワ                                 5.2      15      C
シタノハマ(夕景浜)                                            C
ウノクソ                                     3.4      172      C
シタノハマ(カタンザキ)                           2.0      249      C
モロミゾ
クズレイシ                                   7.0      265     C
伊豆岬                                     5.6      195     C
ハシガサキ                           C       8.0      134     C
サワジリ(ダイボウ)                             7.0      135     C
ジョウネ                                     4.7      526     B
ミツイシ(下根崎)                              13.8      964     B
オヨシバ               1.0    514      B                      C
オオネ                1.0    703      B                     C
アカアナ(ミノワ)          1.0    793      B                     C
キタノシタ               1.0    860      B       3.0     273     C
ボウズネ               2.0    124      C                     C
アカバッキョウ
オオハシ               1.0   1121      A       6.9     381     C
三池浜                                                    C
アラキ                 2.0    382      C                      C
コーボー
ウラネ                 1.0    457      C                      C
コオラ                                                     C
台が浜

 生物調査 今回は目視観察のみ行ったが、フクトコブシはジョウネからコオラまでの間の東側で比較的多く生息しているのを確認したが、西側ではほとんど観察できなかった。
サザエは、ミツイシからコオラまでの間の東側で多く生息しているのを確認したが、西側ではほとんど観察できなかった。

 環境調査 調査した25地点のうち、比較的島の東側で透明度が高く,砂泥の堆積も少なかった。しかし,西側では透明度が低く,砂泥が堆積している場所が多かった。しかし,水深5m以深の透明度がそれほど低くないことや,粘土状の堆積物は少なかったことから,沿岸部に集中している濁りは,陸上(海岸線)からの土砂流入の影響と,海底に堆積した砂等がうねりや波の影響により巻き上げられて発生しているものと思われる。
表2 環境調査結果

  調査地点          透明度(水平距離)     底質           砂泥堆積の有無

メガネイワ                          大転石、砂利             有
阿古カマニワ           15m以上       中小転石、砂利            有
シタノハマ(夕景浜)       10m未満        大転石、砂利             有
ウノクソ                            中小転石、砂利            有
シタノハマ(カタンザキ)      15m以上       岩礁                   無
モロミゾ                5m未満       砂地               粘土状の泥
クズレイシ              15m以上       巨岩、大中転石         少し有り
伊豆岬                15m以上       大転石                 無
ハシガサキ                          巨岩、大転石          少し有り
サワジリ(ダイボウ)        15m以上        巨岩               少し有り
ジョウネ                            大中転石             少し有り
ミツイシ(下根崎)                      根、転石             少し有り 
オヨシバ               15m以上       巨岩、大中転石           無
オオネ                15m以上       岩礁                  無
アカアナ(ミノワ)                       巨岩
キタノシタ               15m以上       大転石              少し有り
ボウズネ               15m以上        根       
アカバッキョウ             5m未満       砂地に中小転石           有
オオハシ               10m以上15m未満  砂地に転石           少し有り
三池浜                             中小転石                有
アラキ                 10m未満        大中転石、板石        少し有り
コーボー                             大中小転石          少し有り
ウラネ                 10m以上15m未満   根、中小転石         少し有り
コオラ                 10m以上15m未満  転石、砂利              有
台が浜                10m以上15m未満   大中転石              無