三宅島トコブシ種苗放流
日時
平成13年8月30日(木)〜31日(金)
放流場所
 三宅島(計4地点)
  ・台が浜(4万個)
  ・ジョウネ(4万個)
  ・阿古カマニワ(8万個)
  ・錆が浜(1万個)海の状況が悪かったため、現場判断。
調査員及び放流立会者
 金丸(三宅島船籍:組合長の船)
 大洋丸(三宅島船籍)
 康洋丸(大島船籍)
 東京都農林水産部水産課    武藤
 〃                   永田
 〃 三宅支庁 産業課 水産係 永坂
 東京都水産試験場 大島分場  杉野
       〃             滝尾
 東京都栽培漁業センター 所長  馬場
       〃             斉藤
       〃             細野
       〃             高橋
 三宅島村役場           平松
       〃             長谷川
 三宅島漁業協同組合 組合長  沖山
       〃             理事  浅沼
 三宅島漁業協同組合員のみなさん 7名
 TBS取材者 1名
宿泊先 
 鈴木荘
行程

8月30日(木)
4:50 元町港集合。
5:10 岡田港着。
5:30 岡田港出港。
9:00 神津島前浜港着、宿出迎え。
9:30 多幸湾にある現地災対本部へ移動。
10:00 明日の放流実施について情報収集、水産課、三宅支庁、三宅村役場、三宅漁協、水試で検討の結果、放流予定の半数(17万個)を放流可能な地点で実施することに決定。関係機関へ電話連絡及びFax連絡。
14:45 神津島村役場へ。
15:15 神津島漁協へ「アカイカ形態異常」についての報告書渡す。
16:00 多幸湾災対へ夕方の会議出席のため移動
17:30 宿着、明日の準備及び打ち合わせ

8月31日(金)
6:30 調査道具一式を持ち、多幸湾へ移動。
6:50 現地災対で情報収集
7:05 三浦港で大洋丸他挨拶、機材を車から船へ移動
7:10 多幸湾待合所にてガスマスク装着方法の説明等を受ける。
7:35 「はまゆう」「えびね丸」出航後に、出港。
9:10 三宅島阿古漁港着、既に「康洋丸」は到着していた。放流トコブシ種苗を各船へ移し、潜水準備。
9:40 阿古漁港出港
10:00 「台が浜」にて種苗放流開始、発泡スチロールから種苗を取り出し、船底へ篭に入れて沈める作業の手伝いを行う。また、水試はTBSの依頼でTBS所有の水中ビデオを用いて水中映像撮影を行う。
10:50 水産課からの依頼で「台が浜」投石場所へ種苗1万個を放流。
11:30 作業終了、東回りで「ジョウネ」に向かう。
11:50 大久保港にて昼食、種苗を放流し易いよう小分けにする。
12:45 大久保港発
13:20 「ジョウネ」にて種苗放流開始。
13:55 作業終了、阿古漁協へ移動。
14:15 「阿古カマニワ」での放流作業が終わっていないため、フーカー潜水の漁業者が援助のため、手伝いを行う。水試他スクーバ潜水者のエアーは無いため、陸上からの作業協力を行う。
14:40 放流作業全て終了。
14:50 阿古漁協で機材移し替えや撤収準備。
15:10 阿古漁港発、水試職員は「康洋丸」に乗り、大島へ直接向かう。
17:10 大島元町港着、元町港へ駐車しておいた車に機材を積み、岡田港へもう一台の車を取りに行く。
18:00 大島分場着、機材片づけ。
18:45 全作業終了、帰途へつく。
結果
 放流に先立ち、阿古漁協及び大久保漁港に係留中、放流作業を効率よく行う為に船上にて種苗の仕分け作業を行った(写真1、2)。仕分け後、篭に入れ、船の脇から海水に浸し活力の回復を待った(写真番号3)。
写真1 写真2
  
写真3   
1.水産試験場職員が放流に立ち会った場所
台が浜(図1.図2)
・放流は三宅島の漁業者が実施した(写真番号4)。
・放流後のトコブシ種苗(写真番号5)。
・放流場所は水深8〜10m前後が中心で天然トコブシが見られた(写真番号6)。
・浜の東側で3万個。造成地内に1万個放流。
・透明度は良く、透明度は10m前後。
・水中の地形及び状況について写真撮影を行った。
図1.三宅島と放流地点 図2.台が浜
写真4.台が浜 種苗放流の様子(放流者:三宅島漁業者 写真5.トコブシ放流種苗
  
写真6.台が浜 トコブシ天然貝   
ジョウネ(図1.図3)
・放流地点は災害調査を実施した水深よりも浅い場所(水深4〜5m前後が中心)で行った。放流地点周辺一帯も泥流の影響を受けており、岩の表面にはシルト状の浮泥が堆積していた(写真番号7)。
・放流地点周辺の適当な転石を反転したところ天然貝も多数見られた(写真番号8)。
・海藻類はアントクメ、テングサ(表面に石灰藻付き)、等が見られた(写真番号9,10,11)。
・透明度が非常に悪く、透明度は2m程度。沖合の良いところで3m程度。北東からの風で波が立ち、崩落及び泥流による土砂が舞い上がり濁りが出ていた。
図3.ジョウネ 写真7.シルト状の浮泥が堆積
写真8.トコブシ天然貝 写真9.アントクメ 多くは枯れ、株が残っている状態であった
写真10.テングサ 表面には石灰藻がついており、商品価値はない 写真11.トコサカノリ
2.水産課職員が放流に立ち会った場所
錆が浜
・濁りがひどく、水中の透明度が悪いため、1万個程度放流した時点で中止。

阿古カマニワ
・錆が浜の海の状態が悪いため、阿古カマニワにトコブシ種苗約8万個体を放流。
・大洋丸(水試乗船)が先に放流作業を終えたため、金丸(水産課乗船)の放流作業を手伝う。
その他
トコブシ種苗放流に際し、今後の種苗の回収率等によっては下記事項について再検討が必要であろう。
 1.輸送方法
 2.放流方法
 3.種苗配布時期

・今回、初めてトコブシ種苗放流に立ち会ったが、夏期の種苗輸送は種苗への負担が大きいように感じた。それは、種苗を転石底面部へ放流した後、種苗の活力が低いためか上手く石に着底できず、潮流によって流されてしまう個体が多く見られた。

・輸送に際し、夏場は外気温が高いため、発泡箱に納めた種苗は保冷剤により低温に保たれた状態で運ばれてきた。放流の効率化のため、開封後は袋詰めをほどき、ある程度(3〜5袋分)を1袋に詰めた後、まとめて篭に入れ、現場の海水中へ降ろした。効率を優先したやり方であったが、袋の中央部にいる個体の酸欠や殻による傷が考えられる。
・また、種苗放流時、一ケ所に固まりとなって放流されているところがあった。時間と手間がかかるため、敬遠されがちであるが、できるだけ多くの個体が転石に活着できるよう各人が少量を、多くの(適切な)場所へ放流する方が後々の生残率や回収率に大きく影響するものと思われた。今後の回収率によっては放流方法や輸送方法を再検討する必要があろう。
・残り半分の種苗放流は、早ければ9月17日〜19日前後に行う可能性がある。


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