新島地区地震災害調査3
東京都水産試験場大島分場
目 的
 地震による海岸崩落被害をうけて約3ヶ月経過した新島アジア磯の海底の状態とサザエの生息状況を調査した。
方 法
調査年月日:平成12年10月25日
調査地点:新島アジア磯、水ヶ下付近(前回と同一地点)
調査方法:調査は調査船「かもめ」で行い、スクーバで潜水して写真撮影を行った。また、サザエの生息状態を把握するため、一定の努力量(3人で30分間)でサザエの採集を行い、そのうち15個体について生殖腺の組織標本を作成し産卵の有無を確認した。
調査員:工藤真弘、杉野 隆、駒沢一朗、山田雅行(かもめ)
結 果
 海面の汚濁は前回(平成12年9月6日)よりかなり減退していたが、水中は透明度が悪く、やや濁りが残っていた。
前回観察できなかった浅所では水深2m付近に砂地ができており岩礁、転石が埋没していた(写真1)。
 水深7,8mまでは巨岩が主体の岩場となり、前回と同様に岩の隙間に砂礫が堆積していた(写真2)。岩の隙間の砂礫堆積は水深10m付近まで見られ、そのまま砂地に繋がっていた。岩礁の表面には依然として浮泥が堆積しておりその堆積量も前回と同程度であった。
 海藻は浅所(2〜7m付近)はハリガネ、深所(10m前後)はタマイタダキが優占し、トサカノリの越夏した胞子体と思われる葉体と切れ残りの果胞子体がわずかに認められたが、テングサはほとんど見られなかった。
 水深3〜10mにかけて3人で30分間の努力量で155個体のサザエを採集した。採集したサザエの殻高組成を図1に示した。殻高組成は4つの年級群に分離され、各年級群の平均殻高は4.5、7.7、9.9cmおよび11.3cmであり、それぞれ2歳,3歳,4歳および5歳以上に相当すると推定される。
写真1 水深2m付近
写真2 水深7〜8m付近

図1.採集したサザエの年級群組成
 前回(平成12年9月6日)調査時と今回採集したサザエの生殖腺断面の組織像を写真3、4、5、6に示した。今回生殖腺を固定した15個体(雄8、 雌7個体)のうち雌雄1個体ずつが産卵途中であったが、残りはすべて産卵後の様相を呈していた。前回調査時にはほとんどの個体が産卵前の状態であったので、この間に産卵が終了したと考えられる。
写真3  写真4
写真5 写真6


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