第56号 平成11年10月18日
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第2回魚病巡回指導結果
 平成11年度第2回の魚病巡回指導を6 〜7 月に実施しましたので、その結果概要をお知らせします。多摩各地区の魚病発生状況は、奥多摩地区ではニジマスのIHN 、恩方地区ではイワナの細菌性鰓病の発症が見られた養殖場がありましたが、現在ではいずれも終息しています。また、ビブリオ病やせっそう病が五日市、多摩、奥多摩湖源流部で発生している所もありましたが、全て投薬により終息しています。一般にビブリオ病はニジマスやアユでの発病が多く見られますが、都内ではヤマメでの発症も見られます。昨年度はニジマス、ヤマメでそれぞれ1件づつ発生があり、今年もすでに数軒の養殖場で発生がありした。また、本年は、8 月中旬の記録的豪雨、9 月中・下旬の豪雨等濁水発生が多く、そのため白点病等の条件性疾病も多発しているようです。
サケ科魚類の魚病解説(6)
 本年5月に国会で「持続的養殖生産確保法」が成立し、本年11月から「特定疾病」等の蔓延防止策が施行されることは「奥多摩分場ニュース第55号( 平成11年 7月) 」でお知らせしました。これらの魚病は日本には未侵入・未定着であるため、詳細は不明ですが、今回はこの疾病の内サケ科魚類の4疾病について簡単に解説します。
【病名】ウイルス性出血性敗血症(VHS) 【病原体】VHS ウイルス
 ヨーロッパを中心に 古くから知られている疾病で、主としてニジマスが感染しますが、近年ニジマス以外の魚種にも発生しています。 VHSに冒されるのはニジマスでは主に稚魚から出荷サイズの成魚で、症状はIHN(伝染性造血器壊死症: 分場ニュース43号解説) に似ており、体色黒化、眼球突出、貧血がみられ、眼球・体表・鰓からの出血が特徴です。発生地域はヨーロッパ諸国及び北米です。
【病名】流行性造血器壊死症 (EHN)【病原体】 EHN ウイルス
 1984年オーストラリアの養殖場でレッド・フィン・パーチ(スズキ類) の稚魚大量斃死原因ウイルスとして分離されました。その後、ニジマスでの発生も確認されていますが、発生地域がオーストラリアに限定されています。ニジマスでの症状は体色黒化、運動失調、摂餌低下、魚体後半部皮膚の潰瘍、腹部膨満、肛門突出などがみられますが、予防・防疫に関する具体的な情報はほとんど知られていません。
【病名】レッドマウス症(ERM) 【病原体】Yersinia ruckeri
 ほとんど全てのサケ科魚類が感染しますが、主にニジマスでの発生・被害が多い細菌性の疾病です。症状は体色黒化、緩慢遊泳のほか、口吻部、口腔内、下顎および鰭基部の発赤、皮下出血がみられます。特に春から夏にかけての水温上昇期の稚魚に発生しやすく、死亡率は高くなります。発生地域はアメリカ、カナダ、チリ、ヨーロッパ諸国、南アフリカ、オーストラリアです。
【病名】ピシリケッチア症【病原体】Piscirichettia salmonis
 1989 年にチリの海面養殖のギンザケに発生した疾病で、病原体はウイルスと細菌の中間に分類されるリケッチアという微生物です。実験的にはニジマス、マスノスケ大西洋サケにも感染発病します。ギンザケでは主に海水移行後に発症し、病魚は貧血、体色黒化を示し、体表に白色病巣や出血性潰瘍がられます。発生地域はチリ、ノルウエー、アイルランド、カナダです。

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