奥多摩分場ニュース
第57号 平成11年 11月30日
〒 198-0105  東京都西多摩郡奥多摩町小丹波720
TEL(0428)85−2028・FAX85−1509
河川にやさしい養殖技術!
 ヤマメ・ニジマス等の冷水魚の養殖は、清例な水で飼育されているため、きれいなイメージがありますが、飼育魚の糞等で飼育水を汚し、その排水は河川に放流されているため、河川を汚してしてしまう現実があります。そのため、当分場では良好な河川環境を維持するため、養殖場からの汚染物質の排出を減らす試験・研究を進めてきました。
 その結果、排出される糞の量は餌料の約20%であり、飼育魚の糞を沈殿処理することによって養殖による汚染物質の80%を排水から除去できることが実証されました。この成果を受けて排出される汚染物質(飼育魚の糞等)を沈殿処理し、上澄み水だけを排出する沈殿処理槽や池底の飼育魚の糞等の汚泥を掃除し、排水から分離・除去する池底掃除機の設置を勧めてきました。今回はこれらのことによって、養魚場下流の河川環境が改善された事例を紹介します。
 都下奥多摩町のM養殖場では沈殿池がありましたが、汚泥の約半分が排水とともに排出されていました。
 平成9年に水試の研究成果を受けて図1のように整流板を改造し、その結果100%近くの汚泥が排水から分離できるようになりました(奥多摩分場ニュース第52号 平成11年3月25日)。また、同時に池底掃除機によって池底の汚泥も適宜除去し、上澄み水のみ排水するように務め、河川への汚染負荷軽減を図りました。その結果、生息する大型底生動物(主に水生昆虫類)の出現状況から河川環境の良好性を相対的に表すスコア法によって養殖池付近の環境を測定したところ、養殖場の上流域、排水域、その下流域のASPT値(0:汚い〜10:きれいとする評価値)が改造後は養魚場排水域が5.0から6.1に、その下流域が6.1から6.9に改善されました(表1)。
表1 スコア法によるASPT値
M養魚場 T養魚場
改造前 改造後 導入前 導入後
上流域 6.9 6.9 6.9 6.9
排水域 5.0 6.1 5.0 6.1
下流域 6.1 6.9 6.1 6.9
沈澱処理槽の汚泥除去状況
図2 沈澱処理槽の汚泥除去状況
 また、沈殿池を設置することが出来ない養殖場では、池底掃除機を導入し、汚染の主役である池底の汚泥を排水から分離することにより河川への汚染負荷軽減を図ることもできます。
 八王子市のT養魚場は平成9年に池底掃除機を導入し、定期的に池底に溜まった汚泥を除去することによりASPT値が養魚場排水域で5.0から6.1に、その下流域が6.1から6.9に改善されました。この値でみると、両養魚場ともその上流域と下流域は同じ値を示すようになりました。このように、養殖池底の汚泥を排水から分離・除去をするだけでも環境に与える影響はかなり緩和できることが実証されました。
 冷水魚の養殖は冷たくて「きれいな水」が必要なので養殖場は主に多摩地区の山間地に立地し、その地域の重要な産業となっています。また、これらの河川水は都民の貴重な「飲料水」ともなっています。そのため、冷水魚の養殖もよりきれいな河川水を保全できるよう努力することが今後とも重要となります。そのため当分場は今後も河川にやさしい養魚技術の試験・研究を進めていきたいと考えています。
沈澱処理層サイズ(/槽)
8m長×2m幅×1m深

図1 沈澱処理層の構造
サクラマスを見つけてください!
 東京都内湾漁業整備組合は多摩川下流部にヤマメの1年魚を5,000尾11月24日放流しました。これは、東京の海や川にもう一度サクラマスを増やすために行われているものです。
 サクラマスは川で生まれたヤマメのうち、海に下って大きく育ち、再び川に戻って産卵し一生を終えるサケ科の魚です。
 海で育ったのち川に戻ってくるのは来年春と考えられます。サクラマスを捕獲された方は是非下記にご連絡下さい。粗品が進呈されます。なお。放流魚は目印として脂鰭を切断してあります。
サクラマス(脂鰭)
連絡先:東京都内湾漁業整備協会
TEL 03-3458-2771

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