奥多摩分場ニュース
第59号 平成12年4月28日
〒 198-0105  東京都西多摩郡奥多摩町小丹波720
TEL(0428)85-2028・FAX(0428)85-1509
ヤマメの春稚魚放流終了!
 奥多摩漁協、秋川漁協、恩方漁協等の河川漁協のヤマメ春稚魚の放流は、4月5日秋川からはじまり、4月17日の大丹波川の放流を最後に終了しました。多摩川、秋川、浅川の各河川、 支流に合計367,000尾、平均で体長4cm、体重で約2gのヤマメが泳ぎ回っていることとなります。さらに、本年も、ヤマメ は成魚放流等東京都全体では例年では445,000尾程が放流されます。
 春稚魚は約2gと小型ですが、これが成長の良い河川ですと、 採捕してもよい体長=2cmには夏にはなります。また、釣り残されたヤマメは来年の秋には産卵することとなります。
 今回、放流された稚魚は、当奥多摩分場で昨年の10月下旬から採卵し、孵化、浮上、餌付けと育てた純粋の多摩川系統のヤマメです。昨年はいつまでも涼しくならない秋でしたので、水温も高く、例年より約2週間ほど成熟が遅れたり、秋から冬、春と降水量が極めて少なく、飼育水の確保にも苦労しましたが、 病気もなく、順調に育ってくれました。河川に放流されても無事大きく育って欲しいものです。
ヤマメ
ヤマメ(Oncorhynchus masou)
サクラマスを探してください!
 成長してサクラマスになるヤマメのスモルトを1,000尾、大田区田園調布の調布取水堰下流で3月23日放流しました。大きさは平均で全長17cm、体重62g、分場で採卵・飼育し、スモルト化さ せたものです。
 渓流に生まれたヤマメのうちその一部は、海に降りて、豊富な餌を食べ、大きく育ち、再び川に戻って産卵するサクラマスとなります。そして、海に降りるタイプは体色が銀色となり、スモルトと称します。
 多摩川には昭和初期頃までは、東京湾からサクラマスが遡上し 様々な漁法で捕られていました。当分場ではこのサクラマスを復活させるための研究を行っています。今回の放流はその一環として実施したものです。
 放流した魚のうち3尾に発振器を取り付け、その発信音を4日に渡って追跡したところ、放流翌日の増水で一旦9km以上下った のち、再び放流地点の5km下流以内に戻った模様でした。なお、今回放流した魚も脂鰭が切除してありますので、多摩川や東京湾でサクラマスを釣られた方は水産試験場奥多摩分場までご連絡ください。
サクラマス
サクラマス(Oncorhynchus masou)
《サケ科魚類の魚病解説(7)》ビブリオ病
 ビブリオ病は魚類細菌性疾病のなかで最も古くから知られている魚病の一つで、ヨーロッパでは18世紀頃から、ウナギでの発生が知られています。人でもビブリオ属の病原菌として腸炎ピプリオやコレラ菌などが有名ですが、種類が異なり、魚類の病原菌が人に感染することはありません。日本では1950年代にニジマスで分離された報告があり、海水魚から分離されたものとの比較研究が行われてきました。都内でも1966年にアユ、1968年にニジマスで初めて発病しました。以来、都内では毎年のように発生が見られましたが、最近では発生件数が少なく、せっそう病(分場ニュース55号で解説)ほど問題にはなっていませんでした。しかし、ここ2〜3年、都内ではいままで発病がなかったヤマ メに発生し、病原性が変化している可能性があります。
 本病が感染する魚種の範囲は広く、海水魚、淡水魚を問わず発生がみられますが、最近では特にアユやニジマスでの発生が多く、その被害が問題になっています。ニジマスでの発病はすべての大きさにみられ、急性の場合ほとんど症状は現れませんが、慢性の場合は体表に潰瘍が形成されたり、眼球が突出するのが特徴です。内臓は全般に出血しており、特に腸管や肛門付近が赤く充血してるのが目立ちます。 ビブリオ病の治療薬として認可された水産用医療品が販売されており、早期に発見し投薬を行えば完治することが可能です。 ただし、せっそう病と同様に薬剤耐性菌も出現しているため魚病 診断機関による診断と薬剤感受性試験による適切な薬剤の選択が 必要です。また、1988年に国内初の水産用ワクチンとしてニジマス、アユの ビブリオ病ワクチンが認可され、効果を上げています。
 全国養鱒技術協議会の疾病実態調査では平成10年度の全国総診断件数1,069件のうち混合感染を含むビブリオ病の件数は37件(10件) で東京都は1件でした。
back
もどる