奥多摩分場ニュース
第61号 平成12年6月22日
〒 198-0105  東京都西多摩郡奥多摩町小丹波720
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奥多摩川放流アユの調査について
 アユの季節がきました。都内では秋川が6月11日に友釣が解禁となり、奥多摩川も6月25日解禁の予定となっています。当分場では、奥多摩川の放流アユの追跡調査を本年も行っていますのでよろしくお願いします。
 今年度は1.放流種苗の魚病チェツク 2.飼育による種苗活力等の検証 3.放流から解禁までの減耗 4.標識放流による移動 5.調査員及びアンケート調査による漁獲状況等の把握を実施しています。
 放流から解禁までの減耗については5月26日に調査しました。その結果、白丸ダム〜川井堰の区間の死魚は42尾( 約3.8万尾、5月10〜15日放流) 、目視計数できたアユが1.7万尾でした。死魚数、放流アユ生息数は昨年より、かなり良い数値となっています( 下の11年度調査結果を参照) 。また、昨年は川井堰からの大量の流下が想像されましたので、流下アユをチェツクしたところ0〜4尾/h程度でした。なお、この区間は上流及び下流からの加入はないところです。
 今までのところ、昨年と比べ放流されたアユは順調に経過しているようです。
 標識魚放流による移動についてはアユの鼻に標識し、約2,000尾放流しましたので釣ったり、死魚を拾った方は水産試験場又は奥多摩漁協までご連絡ください。その時1.釣った、または拾った日 2.その場所( 出来るだけ詳しく)  3.その時の大きさ(全長、体重) を教えてください。よろしくお願いします。
ハナカン標識放流概要
放流魚写真
写真 5月11日 放流魚 ビーズの色は黄色
平成11年度放流アユ調査結果について
 昨年の放流アユ追跡調査結果概要をお知らせします。
1.魚病検査結果
 昨年、奥多摩川の放流は9日延べ15回、約57.5万尾でした。各放流回、種苗由来毎に「冷水病」病原菌の保菌および蛍光抗体法による陽性個体の有無を検査しました。その結果、保菌魚は4回出現し、6尾、陽性個体は9回出現し、53尾、サンプルに対する出現率は陽性個体で8.1 %と少なめでした。また、河川の死魚を調べたところ保菌魚は28尾中 0尾、陽性個体は114 尾中17尾(14.9%)でした。
2.解禁までの減耗について
 長時間の輸送のため放流時には生きていても、その後に死亡することもあります。10年度の調査で放流後5〜10日の間に死亡が多いと判明していましたので、奥多摩の鳩の巣から川井の間で、初回放流から11日後の5月21日、死魚を拾い集めたところ2,266 尾でした。この区間に放流数は約 4.6万尾でしたので死魚は約5%となりました。
 同じ区間に約2,000尾の標識魚を放流し、解禁までの減耗を調べました。解禁の11日前の6月16日に潜水し、標識魚を探したところ僅か4尾しか発見できませんでした。また、標識のついていないアユを計数したところ400〜500尾しか確認出来ませんでした。この区間は、上流は白丸ダム、下流は川井堰と共に魚道は無く、上流からも下流からもアユの加入のない区間です。放流から調査日まで、水量が大きく増加するようなことはありませんでした。放流数4.6万尾から死魚と確認できた魚を差し引くと、放流魚の約93%の4.3万尾は行方不明となります。
3.漁期間中の釣獲状況と成長
 地元アユ友釣り研究会員に期間中の釣獲状況を調査票に記入してもらいました。その結果から漁期間中の釣獲状況と成長を計算したところ、1日1回当たりの平均釣獲尾数は6月が13.3尾、他は概ね5尾前後と悪く経過しました。大きさは9月上旬に全長で19.4cm程度と順調に成長し、9月中旬には17.5cmと小さくなりました。これは湖産から海産由来アユ主体に交代したためと思われます。その海産アユも10月中旬にはほぼ22cmとなりました。
 遊漁券の発売枚数等から総釣人数、平均釣獲尾数等から放流アユの再捕率を計算すると24.7%となりました。
4.まとめ
 魚病検査の結果、冷水病の陽性個体は8.1%と低く、死亡魚でも14.9%しかありませんでした。輸送によるストレス等による死亡も放流魚の約5%程度と低い値でした。それでも放流から解禁までにいなくなってしまい、放流アユの24.7%しか再捕・回収されませんでした。全国の健康な放流アユの生残率は60〜80%と言われ、再捕率は50%程度と言われています。それから言えば、この再捕率は低い数値と言えます。放流アユの約93%が流下し、魚道のない堰等もあるため再び、上流へは帰って来れないのでしょう。これが昨年の不漁であった原因の一つと想像されました。もちろん、昨年の8、9月の異常な集中豪雨などにより、下流に流されたことも大きな要因として挙げられると思います。

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