奥多摩分場ニュース
第64号 平成12年12月5日
〒 198-0105  東京都西多摩郡奥多摩町小丹波720
TEL(0428)85-2028・FAX(0428)85-1509
ヤマメ発眼卵埋設放流の取り組み!
 平成12年11月18、19日、小河内(氷川、奥多摩、秋川各漁協と東京渓流釣人倶楽部、東京勤労者つり団体、当分場が協力して、奥多摩湖流入4河川と日原川支流1河川、多摩川支流5河川、秋川支流5河川に、ヤマメ発眼卵、計75,000粒を埋設放流しました。12月2日は、秋川支流2河川に10,000粒を秋川漁協、ジャパン・フライ・フィシャーズと当分場が協力しておこないました。この共同放流への取り組みは、本年で3回目を迎えました。
 こうした共同放流体制がとられる以前には、各釣り団体が、独自に放流を行なってきました。なかには15年以上の放流実績があった団体もあります。しかし、最近の研究によって、「同じヤマメでも、水系によって固有の遺伝子群が形成されており、他水系の魚を放流すると、遺伝子が交雑し、それまでの固有遺伝子群を攪乱させることが判明しました」。
 そこで、各団体が集まって話し合った結果、今後放流する魚は、多摩川固有の遺伝子群を保有するヤマメに限ること。また、放流の実施状況を管理するために、各団体ごとに行なっていた放流を、河川の漁業権を国から免許されている漁業協同組合(水産資源の管理者)に統合し、漁協が主体となって「資源増殖事業」の一環として実施しすることになりました。そして、これまで放流をおこなってきた各釣り団体と水産試験場は、これに協力するという形になりました。
 このように、3者が協力し、ヤマメ発眼卵埋設放流ということを、平成10年から実施しています。また毎年10月には、放流前に打ち合わせと勉強会を兼ねた「検討会」を開催し、ヤマメやその環境に対する、より深い知識と理解の修得に努めています。

発眼卵放流の方法

発眼卵放流の風景
発眼卵埋設放流:サケ・マス類の卵は受精し、発生が進み眼球が黒く見えるころを発眼卵と言います。この時期は体の各器官もでき、衝撃などにも強く、湿ってきえいれば移動・運搬にも耐えます。この段階での放流を発眼卵放流と言います。この方法は稚魚放流に比べ生残が低いという欠点がありますが、多くの荷物を背負って行けない源流部の放流等には適しています。実際の放流は、発眼卵は紫外線に弱いので日光に当たらないよう、水通しが良い川底に卵を入れた籠ごと石や砂利で籠を埋めます。孵化した仔魚は籠の隙問から泳ぎ出て、その後、自然の餌で成長することとなるわけです。

発眼卵
《サケ科魚類の魚病解説(8)》細菌性鰓病
【病名】細菌性鰓病
【病原体分類】細菌
【病原体】Flavobacterium barnchiophilum (フラボバクテリウム ブランキオフィラム)
 細菌性鰓病は淡水魚養殖で最も普通にみられ、頻繁に発生する疾病で海外では古くから知られていました。しかし、原因菌と思われる細菌が分離されても感染が成立しなかったため、最近まで原因菌の特定はなされていませんでした。原因菌は1978年に日本のニジマスおよびヤマメで発生した本病で特定され、以降研究が進められてきました。
 本病は水温の高い時期に特に多発し、症状として、鰓蓋が開き、餌食いが急に悪くなって池の側面や排水、注水部付近の水面を群れでフラフラ遊泳するのが特徴です。原因菌は糸状に細長い長捍菌で鰓の表面に付着し繁殖します。このため、鰓の表面ではこの異物を排除しようと粘液が多量に分泌され、上皮細胞が増生します。この結果、鰓の2次鰓弁どうしが癒着し、症状が重くなると鰓弁が棍棒状になるため呼吸ができず、魚は窒息します。
 本病は外観症状や遊泳状態から早期発見が可能な病気ですが、特に稚魚では何もしない場合、斃死率は非常に高くなります。
 塩水浴による治療が可能で、取り上げて短時間浴(5%、3分間)や池の中で長時間浴(1%、1時間以上)が効果を上げています。
 しかし、本病は常在菌による典型的な条件疾病であるため、根本的な解決には飼育密度、飼育水の汚れ、注水量等の飼育環境の改善が必要となります。
 全国養鱒技術協議会の疾病実態調査では、平成11年度の全国総診断件数1,014件の内、混合感染を含む細菌性鰓病は94件(18都県)で東京都の診断件数は20件でした。本病は慣れれば自分で診断し、塩水浴で直すことができるため、実際の発生件数はこれよりかなり多いと推測されます。

もどる
もどる