東京都水産試験場では港区お台場で内湾生物の調査を行っています。昨年(2004年)11月9日の調査で、人工砂浜の石に身を寄せるように隠れている不審なカニを発見しました。甲羅の幅は約5cmの雌で(写真1, 写真2)、写真撮影後放流しました。同月25日にも同じ場所で別の雌ガニの死骸(写真3)が見つかりました。
 国立科学博物館(新宿区百人町)の武田正倫動物研究部長に種の確認をお願いしたところ上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)と判明しました。
 上海ガニは主に朝鮮半島西側から東シナ海沿岸に生息しています。お台場で見つかった理由として、貨物船のバラスト水に幼生が紛れ込んだとも考えられますが、2尾とも大型個体で、食用として輸入されている雌であることから、密放流の可能性が高いようです。
 上海ガニは日本在来のモクズガニに比べ水質汚濁に強く、東京湾に定着する可能性も大きいと思われます。定着した場合モクズガニとの交雑による遺伝的攪乱やモクズガニの生息域を奪う恐れがあります。
 武田博士は「水槽で2,3日飼うと食べられなくなるかもしれないが、かわいそうでも『食品』」として扱ってほしい」と話しています。


写真1


写真2

生きていた雌の上海ガニ(11月9日)


写真3

死亡していた雌の上海ガニ(11月25日)。上の個体とは別個体でした。