小笠原海域天然礁調査報告書 (硫黄島・南硫黄島浅海漁場調査) [9716KB pdfファイル] 

東京都水産試験場大島分場 堤・斉藤・米山・小泉
東京都小笠原水産センタ-  西村・三木・木村・みやこ・興洋
 
近年、北硫黄島に第1種共同漁業権が設定され、硫黄島以南にも設定の必要性が検討されはじめたこと、および、小笠原島漁業協同組合ならびに小笠原母島漁業協同組合所属の漁船性能の向上にともない、南硫黄島の先にまで漁場が拡大しつつあること等により本調査を実施した。調査の中間報告書は、昭和60年9月に作成し、水産課に提出したが、その後、生物の査定・計測等が終了したので本報告書として取りまとめた。今回の卵稚仔調査で20種を上回る魚卵の採集や、伊豆諸島海域では稀であるマカジキ科の稚仔魚が認められることなどから今後さらに調査が必要な海域である。
 また、この海域の底魚漁場についても系統的な調査資料が乏しく、海底地形図の作成や、漁海況の把握が急務である。
 磯根資源については、現在、火山列島3島にはマルサザエ・シャコガイ・イセエビの第1種共同漁業権およびタカベ建切網・寄網の第2種共同漁業権が地先距岸2000mに設定されている。
 硫黄島の磯根資源については、調査期間が短かったが、マルサザエを主とした生息域の中心は硫黄島北西の監獄岩である。かっては釜岩にも生息がみられたとの事であるが、釜岩は硫黄島本島と陸続きとなり、また、漂砂等のため生物層は貧弱であった。
 また、本島周辺は海岸と摺鉢山から吹き上げる煙等による硫黄臭が強く、海岸近くは噴出物等のため黄緑色に変色している海域が広く、この海域での生物層は貧弱と考えられた。当面、監獄岩を中心に資源の活用を図るべきである。南硫黄島では、潮間帯にマルサザエ等磯根資源の生息が認められたが、局所的調査に留まっており、更に総合的な調査が必要である。
 シャコガイの生息量は、硫黄島・南硫黄島共に少なかった。
 イセエビ類については、硫黄島での確認はできず、南硫黄島でシマイセエビ、カノコイセエビを若干確認したが、硫黄島を含め、その生息量はさほど多くはなく資源管理の必要な海域と判断された。
 また、漁場が南硫黄島の南方海域に広がっていくことを考慮すると、硫黄島は、漁船漁業の中継基地としての役割も高いと判断された。

調査研究報告 208 1994年12月