毎年11月に、奥多摩の山深い川や沢でヤマメの資源増殖のために、稚魚放流が行われています。しかし、トラックで稚魚を運搬することが難しい山間部では、発眼卵(卵内の発生途中に眼に黒い色素が生じて眼の位置がはっきりした卵)を容器に入れて砂利に埋め、自力でふ化する方法(発眼卵埋設放流)が有効であることが奥多摩分場の調査で確認されています。この結果をもとに、水産試験場奥多摩分場の技術指導のもと、平成10年から奥多摩、小河内、氷川、秋川各漁協が放流事業の一環として実施し始め、それ以前から自主的に発眼卵の放流を行っていた各釣り団体が放流作業にボランティアとして協力するという体制で放流に取り組んでいます。

 平成15年11月15日,16日に19河川、谷、沢で、合計10万粒のヤマメ発眼卵を放流しました。

 15日の海沢川での作業を取材しましたので、お知らせします。


発眼卵を収容するVボックス(バイバートボックス)

発眼卵を収容するVボックス(バイバートボックス)です。上の段に500粒ほどの発眼卵を収容して川床に砂利で埋めます。ふ化した仔魚は下の段に降りて卵黄の栄養を吸収して成長し、少しスマートになってボックスから外に出ます。

発眼卵は紫外線に弱いので、しっかり砂利で覆います。
 

卵の数は1卵の平均重量から計算して重量法で計数します。

卵の数は1卵の平均重量から計算して重量法で計数します。

慎重に、素早く収容します。
 

Vボックスを埋設するのに必要な砂利を採集します。

Vボックスを埋設するのに必要な砂利を採集します。細かい泥が有ると卵に有害なので砂利はかご(緑色)に入れて洗います。
 

Vボックスを白いかごに入れ、周りを洗った砂利を満たします。

Vボックスを白いかごに入れ、周りを洗った砂利を満たします。この白いかごを大きな石で囲んで固定します。
 

慎重に放流場所を決めます。

雨が降らなくても干上がらない場所、適度な流れがある場所等を考慮して、慎重に放流場所を決めます。

Vボックスが流されないように、周りを少し大きな石で囲います。ちょうど良い大きさの石を手渡しで集めます。
 

埋設の様子

来年のお正月頃に体長3cmほどの仔魚が砂利の隙間から抜け出して、自分で餌を食べ始めます。2月から3月にVボックスを回収してふ化率を調査します。過去のふ化率はいずれの河川もほぼ100%となっています。