普及指導資料
平成13年11月
東京都水産試験場 大島分場

 平成12年度からサザエの種苗配布事業が始まりました。サザエ放流種苗がどの程度漁獲に反映されているか(放流効果)を事業レベルで確かめるために、平成 13年度から漁協(漁業者)及び各町村が主体となり、水産課・水産試験場の協力の下、調査(モニタリング調査)を随時、実施していきます。

 漁獲したサザエについて放流貝か否かを判別するためには、殻頂部を研磨する必要があります。下記に研磨に必要な道具類・研磨方法・注意点等をまとめました。


 サザエ放流種苗は、配布時の殻色が白色または灰白色(写真番号1)をしています。これは、餌に含まれる色素によるためです。放流種苗は放流後、2~3年すると漁獲サイズに成長します(図1及び図2)。

 放流種苗は年月の経過に伴い、殻頂部分に海藻や石灰藻、フジツボや海綿など様々な付着物が付くため、放流1年後には、放流種苗の目印となる殻長部の白色(または灰白色)が付着物に覆われ、外観上、天然貝との判別が非常に困難になります(写真番号2)。

 そこで、研磨ブラシを装着した研磨機を用いて殻頂部を研磨する必要があります。


写真1-1 サザエ放流種苗(白色)
写真1-1サザエ放流種苗(白色)
写真1-2 サザエ放流種苗(灰白色)
写真1-2 サザエ放流種苗(灰白色)
写真2 殻頂部に付着物の付いた放流サザエ
写真2 殻頂部に付着物の付いた放流サザエ

1. 研磨に必要な道具

1)卓上ボール盤(研磨機)(写真番号4)
注意事項:
  • 研磨時に力が加わるため、研磨機は重い物のほうが安定し、安全である。
  • 中型のドリル盤でも何らかの台に固定して使用すれば安定する。
  • ドリル盤には海水対策用にアクリル板やベニヤ板などを取り付けると錆防止になる。
写真4 水試で使用のボール盤
写真4 水試で使用のボール盤

2)研磨ブラシ(写真番号5)
写真5 研磨ブラシ
写真5 研磨ブラシ
注意事項:
  • ブラシが硬いと研磨しすぎて良くない。また、ブラシが小型だと研磨に時間がかかる。

3)防塵メガネ(写真番号6)
注意事項:
  • 研磨の際、付着物や研磨ブラシの金くずが飛んでくることがあり、防塵メガネの着用は安全のために必須である。
写真6 防塵メガネ
写真6 防塵メガネ

4)手袋(写真番号7)
写真7 革手袋
写真7 革手袋
注意事項:
  • 回転する研磨ブラシに手があたると怪我をする恐れがあるため、革製の手袋を着用すること。軍手はブラシに繊維が絡み、危険なので使用しないこと。

2. 研磨方法

 研磨を行うと、付着物が飛び散るので、事前にプラスチック盤や布などを用いて機器類を保護しておくと、作業後の片づけが手早く行え、錆も出にくい。

  1. サザエの殻頂部を上側にし、両手で包むように固定する(写真番号8)。
  2. 研磨ブラシに殻頂部をゆっくりあてがい、研磨する。
注意事項:
  • 研磨しすぎると殻表面下の真珠層が出てしまい、判別不能になる。
写真8 サザエ研磨作業風景
写真8 サザエ研磨作業風景

写真10 天然貝の殻頂部
写真10 天然貝の殻頂部
  1. 天然貝は殻頂部に赤茶色と灰白色のイチマツ模様が現れる(写真番号10)。

  1. 慣れない間は、殻頂部を一周研磨する。作業になれてくれば、一部を研磨するだけで判別可能になる。
写真9-1 放流貝(研磨後)
写真9-1 放流貝(研磨後)
写真9-2 放流貝(殻頂部の研磨後)
写真9-1 放流貝(殻頂部の研磨後)

3. その他

  • 卓上ボール盤の回転スピードは速すぎないよう調整する。
  • 研磨作業後、殻の付着物が周囲に飛び散っている為、卓上ボール盤・研磨ブラシにはたっぷりとCRC556等を吹き付け、錆防止を行う。
  • 研磨作業を1人で長時間続けると、腱鞘炎になる危険性がある。こまめに休憩を取るか途中で他の人と交代しながら行うことが必要である。また、作業が楽になるよう、現場でサザエ研磨用の固定台を作るなど随時工夫してください。
  • ヘタの色が黄色味がかっているものが放流貝であることが多い(写真番号11)。

写真11 左:サザエ放流貝 右:天然貝
写真11 左:サザエ放流貝 右:天然貝

 
図1 伊豆大島におけるサザエの成長
図1 伊豆大島におけるサザエの成長
図2 サザエ放流種苗の成長(利島)
図2 サザエ放流種苗の成長(利島)

その他、ご質問やわからない点などありましたら、担当者までお問い合わせ下さい。

東京都水産試験場 大島分場
栽培漁業科 サザエ担当:杉野 隆
電話:04992-4-0381
FAX:04992-4-0383