マハゼ


標準和名

マハゼ

学名

Acanthogobius flavimanus (Temminck and Schlegel)

地方名

ハゼ(全国)、カジカ(宮城)、カワギス(北陸)。

分類

スズキ目、ハゼ科、マハゼ属

形態

体は比較的細長い。背ビレは2基ある。腹ビレは吸盤状。背面は淡褐色で体側に黒褐色の斑紋が数列並ぶ。腹面は白色。東京湾内では最大で体長20cm前後だが、まれに25cmに達するものがある。

分布

日本各地の沿岸と朝鮮半島、中国大陸沿岸に分布する。東京では東京湾内や多摩川、荒川、江戸川などの下流域に普通に見られる。

生態

東京湾での産卵期は冬から春季である。親魚は、海底の砂泥底に長さが数mにもおよぶ産卵用のトンネル(産卵生息孔)を掘ってその天井に卵を産み付ける。卵は長さ2mmほどの長円形で、天井から吊り下がる。親魚はふ化するまでの間、トンネル内の卵を守る。
 ふ化仔魚は、潮流などによってトンネルから出て、はじめのうちは海中を漂いながらプランクトンを食べて成長する。毎年2月から4月頃には体長1cmから2cmの仔魚が大量に採集される。初夏の頃になると、体長3cmから4cmほどに育った稚魚は海底に着底し、ゴカイなどの底生生物を食べるようになる。6月から7月頃には、湾内や河口域の水深数10cmほどの波打ち際で6cmから7cmに育った小型魚が釣れるようになり、釣り人はこの当歳魚をデキハゼと呼んでいる。この時期、まれに前年生まれの大型魚も釣れるが、こちらはヒネハゼと呼ばれる。
デキハゼはその後も成長を続け、9月頃には体長10数cmとなり、ヒガンハゼと呼ばれる。やがて湾内の水温低下とともに、マハゼは水深10m前後の深場へ移動するが、この時期のマハゼはオチハゼとかケタハゼと呼ばれている。体長15cmを越えるほどに成長したマハゼ親魚は、すでに述べたように、海底に産卵生息孔を掘って産卵し、多くは一年で生涯を終える。

資源の利用と保全

本種は東京都内湾域の代表的な漁業対象種であり、刺網などによって年間10トンから50トン程度が漁獲されている。また、江戸前を代表する釣り対象魚(ゲームフィッシュ)であり、釣り人の人気は高い。従って、本種を対象とした遊漁船が秋期を中心に都内各地の地先から出漁している。また、湾内や河口域では多くの釣り人が岸からの釣りを楽しんでいる。

調理法

天ぷらが一般的だが、新鮮な大型魚の刺身も絶品。保存食用の甘露煮も味わいが深い。

春先に採集される体長2cmのマハゼ仔魚

春先に採集される体長2cmのマハゼ仔魚

東京都水産試験場のマハゼ産卵生息孔模型

東京都水産試験場の
マハゼ産卵生息孔模型


お台場のハゼ遊漁船

お台場のハゼ遊漁船