背景及び目的

三宅島では、今でも火山ガスの放出が続いており、火山ガスに強い作物の選択が喫緊の課題になっています。そこで、三宅島における二酸化硫黄の暴露濃度と被害程度の関係を明らかにし、観葉植物および野菜類の二酸化硫黄に対する感受性の強弱を明らかにする。

方法

被覆したハウス(イージーハウス:4.95m×3.10m)の試験区を島内3ヶ所(阿古、伊豆、坪田)に設置し二酸化硫黄検知器を設置してガス濃度を調べ、各作物の被害程度との関係を明らかにする。供試作物は、観葉植物ではレザーファン、タマシダ、ルスカス、コルディリーネを用い、夏野菜ではキュウリ、トマト、ナスを用いた。なお、ガスデータは、1時間値(5分間値の平均)を用いた。

これまでの結果

  1. 二酸化硫黄の暴露状況
    検知器を設置してから現在まで(5月20日から9月27日)のガス濃度は阿古試験区では村の基準でレベル1相当の0.2ppm以上が27回、 レベル2相当の0.6ppm以上が20回、レベル3相当の2.0ppm以上が4回であった。伊豆試験区ではレベル1が9回、レベル2が2回、坪田試験区ではレベル1が5回、レベル2が2回であった。阿古試験区は頻繁に二酸化硫黄ガスの発生があり、1時間値の最高は2.9ppmであった。
  2. 観葉植物への被害
    レザーファンは0.4ppmから葉先に被害が見られた。濃度が高くなると被害程度も大きくなり、1.2ppmでは葉の半分程が枯れ上がり、2.0ppm以上では全体が枯れ上がった。未展開、展開途中の葉は被害がなく、展開直後の葉は被害がないか小さかった。
    タマシダも0.5ppmで被害が確認された。レザーファン同様、1.2ppmでは半分以上が枯れ上がり、2.0ppm以上では出葉直後の葉以外は枯れ上がった。ルスカスとコルディリーネは2.6ppmで被害が認められた。また、イカタバルスカスとササバルスカスの被害について差は見られなかった。
  3. 野菜への被害
    キュウリ、トマト、ナス、いずれの野菜も葉に被害が生じ、果実の被害はみられなかった。葉の枯れ上がりや落葉により生育が停止するが、樹勢の回復と共に着果し収穫できるようになったが、収量への影響が懸念された。また、発芽後、子葉期にガス害を受けると、初期生育に甚大な影響を受けることが確認された。
  4. 施設による被害の差
    データはまだ少ないが、ハウスを閉めた場合、ハウスの内外のガス濃度を比較すると、ハウス内での濃度は低い傾向がみられ、レザーファンへの被害もみられなかった。この結果から、ハウスの開閉により被害の軽減化を図ることが可能であることが伺えた。
  5. その他(農家巡回)
    アシタバは一部の高濃度地区以外では、ほとんど被害は認めらず、他の作物に比べ火山ガスに強いと考えられた。一方、サトイモ(赤芽)は、古い葉に被害を生じ、新しい葉には被害が認められなかった。
      

キュウリ阿古6月21日1.2ppm

キュウリ阿古6月21日、前日1.2ppm

キュウリ阿古7月21日

キュウリ阿古7月21日

キュウリ阿古7月21日 トマト阿古6月25日

         キュウリ阿古7月21日          トマト阿古6月25日、23日に2.6ppm

暴露直後のナス阿古7月21日

暴露直後のナス、阿古7月21日

アシタバ阿古7月21日

アシタバ、阿古7月21日

サトイモ阿古7月21日 ホウレンソウ伊豆6月8日

      サトイモ、阿古7月21日          ホウレンソウ伊豆6月8日、6月2日に1.2ppm

サツマイモ阿古7月25日

サツマイモ、阿古7月25日、7月23日に2.6ppm