【背景・ねらい】

  

  八丈島では、以前から島内での鮮度の高い地場野菜への需要が高く、近年の食の安全・安心に対する関心の高まりを受けて、需要はさらに増加しています。一方で、八丈島にはJAが運営する「公設市場」と呼ばれる青果市場(写真1)があり、昭和41年の開設以来、島内産野菜類の集散拠点となってきました。普及指導センターでは、島内の需要増大に応え、出荷物の充実を図るため、公設市場の出荷者の組織化支援に取り組みました。その結果、JAは平成17年に公設市場出荷組合を発足させました。普及センターは公設市場出荷組合に対して以下の取り組みを行い、成果をあげてきました。

 

【成果の内容・特徴】 

① 統一出荷規格作成を支援

 公設市場出荷組合に出荷された出荷物について、当初、出荷規格が統一されておらず、品質に問題がありました。そのため、平成19年から普及指導センターが東京都青果物出荷規格を参考に出荷規格の原案を作り、組合の定例会で検討を行いました。1年以上にわたって7回の検討を行い、平成22年までに61品目に関して「八丈島青果物・出荷規格」を完成させました(図1)。

② 出荷実績

 平成17年の組合発足以降、普及センターの指導による組合員の栽培技術の向上や、出荷規格の運用指導により、公設市場の野菜類出荷額は20年度には3千万円に達しました。八丈島全体の農産物売り上げ高で比較すると主要切り葉であるレザーファン、ルスカスに次ぎます(図2)。 品目別では八丈島の特産品であるオクラ、パッションフルーツ、アシタバ等の出荷額が大きく、次いでトマトなど日常野菜がこれに次ぎます(図3)。

③ 新たな特産品の開発

 平成22年度から普及センターでは島内で以前から栽培されていた「菊池レモン」(図4)を商品化しようという取組を始めました。平成23年には公設市場出荷組合の内部組織としてのレモン部会が設立されました。普及センターでは、部会への苗木配布、栽培講習会、現地検討会、販路開拓等の場面において、支援・指導を行なってきました。平成25年度には、部会員数28名、栽培面積1.1ヘクタールに達し、約4トンの出荷が見込まれています。  

【成果の活用と反映】

     

菊池レモンの生産を契機として、これまで島外への出荷がほとんどなかった野菜類にも島外出荷の道が開けてきました。八丈産の特産品に対しては、菊池レモンの出荷先となる内地の業者が関心を示しています。また、八丈島での食育の推進など、島内でも学校給食等に利用する可能性があります。

普及指導センターでは、収量・品質向上のための技術指導にとどまらず、販路拡大に向けた支援も重点的に行っていきます。

  

公設市場資料