貯蔵中に発生するサンダーソニア球根の腐敗を防ぎます 
消石灰とキュアリング処理効果について

 サンダーソニアの球根の貯蔵時の青カビによる腐敗を防止するには,貯蔵前の30℃4日間のキュアリング処理や、消石灰を250g/ !添加したくん炭を貯蔵の際に混和することで軽減できることが分かりました。さらに,これらの2つの技術を組合せると腐敗軽減効果が向上することが分かりました。

背景・ねらい

サンダーソニアは、花形がベルに似てユニークであり、オレンジ色の可憐な花を多数着ける人気のある切り花です(写真1)。八丈島では、10年以上も前から出荷が始まり、かつては年間20万本以上を販売していましたが、安定した球根の確保ができず、現在は半減しています。球根をいかに確保するかが増産に向けて大きな課題です。種子から球根を養成する場合、採花するまで3年以上もかかります。また、休眠を打破するため冷蔵庫で球根を3ヵ月以上貯蔵しますが、その際、球根が青カビで腐敗し、ひどい場合は使用不能になります(写真2)。そこで、この青カビの発生を抑制するために、消石灰添加およびキュアリング処理の活用について検討しました。

成果の内容・特徴

1. 消石灰処理
  1cmに切断した球根を消石灰の添加量を変えたくん炭で保存した場合、添加量が多いほど、カビの発生が抑制されました。消石灰を添加しないと9割近くカビが発生しましたが、消石灰を250g"!添加すると1割程度の発生に抑えることができました(図1)。

2. キュアリング処理
  傷口部のコルク形成を早め病原菌進入を防ぐため、高湿度条件で一定温度、一定期間処理するキュアリングという処理を検討しました。サトイモで実用化されている30℃4日間キュアリング処理は、球根の切り口の有無にかかわらず、カビの発生を大幅に抑えました。一方、ジャガイモで実用化されている18℃10日間キュアリング処理は、カビの発生を、むしろ助長しました(表1)。

3. 消石灰とキュアリングの組合せ処理
  傷がある球根では、消石灰とキュアリング処理を組み合わせることで腐敗抑制効果が高くなりました。しかし、傷がない球根では、処理の有無にかかわらず、腐敗がほとんど確認できませんでした(図2)。貯蔵前に傷の有無によりきちんと分別し、傷がある球根については消石灰とキュアリングを組み合わせた処理が必要であることがわかりました。

成果の活用と反映

3戸の農家でこの技術を実証したところ、すべての農家で処理効果が確認され(図3)、この技術が生産現場に適応できることを確認しました 。
                    (岡澤立夫・矢野貴巳・吉村聡志(現中央農業改良普及センター)

サンダーソニア

写真1 サンダーソニア

球根に発生したカビ

写真2 球根に発生したカビ

           

消石灰添加量とカビ発生程度 

      

   キュアリング処理によるカビ発生抑制効果

        

消石灰とキュアリングの組合せ処理によるカビ発生抑制効果

上 図2 消石灰とキュアリングの組み合わせ処理によるカビ発生抑制効果

*傷がある球根と傷がない球根に分けて調査

 

農家の成績

図3 農家A,B,Cにおける消石灰とキュアリングの組み合わせ効果

         処理区                消石灰区        消石灰+キュアリング 

生産現場の効果

写真4は農家B 上段:球根全体にカビ、下段:球根の傷口や先端部のみにカビ

生産現場でも消石灰とキュアリング組み合わせの効果を確認