研究の背景とねらい

平成19年春、JA東京島しょ新島店の直売所が整備・拡充され、その結果、島内産の野菜、切り花、豚肉などの出荷量が増え、一般家庭だけではなく、食堂や民宿もこの直売所を利用して食材を購入するなど、島民の評判は高まっています。しかし、特定の時期に同じ野菜の出荷が集中し、売れ残りが出る一方で、冬季を中心に出荷品目が少なくなる時期(端境期)があり、生産者及び消費者から改善の要望が上がっていました。そこで野菜の地産地消をさらに進めるため、島内産野菜の新たな販路の開拓と端境期の増産対策への支援を行いました。


成果の内容と特徴

  1. 根菜類の学校給食への出荷
    新島では、サツマイモやサトイモなどの根菜類の栽培が盛んですが、島外出荷には向かないため、収穫期には直売所への出荷が集中し、売れ残りが目立っていました。そこで当事業所では、新たな販路として島内の学校給食への出荷に着目し、村、学校給食栄養士、JA、直売部会、島しょ保健所と連携し、出荷方法、量、価格、規格などの出荷体制づくりを支援しました。その結果、平成19年6月から、タマネギ、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ダイコンなどの保育園、小・中学校の給食への出荷が始まりました。
  2. 端境期の野菜増産と品目拡大
    数年前から直売所の端境期対策として、秋から冬にかけて収穫する抑制トマト・キュウリの導入を進めてきましたが、人気が高く、いつも売り切れという状況でした。そこで、端境期の野菜増産を図るため、耐風強化ハウスが平成17年度から3カ年で10棟、新島に導入されました。当事業所では、抑制トマト・キュウリの栽培技術向上に加え、秋どりサヤインゲン、葉物類など新たな品目の導入を支援し、様々な野菜が常時並んでいる直売所づくりを進めています。

成果の活用と反映

学校給食への出荷を契機に、生産者の生産意欲、意識が高まっています。また、生徒・児童が栽培ほ場を見学するなど、子供たちの食への関心も高まっています。次年度以降は、計画的な作付けや貯蔵管理、さらには葉菜類や果菜類の出荷に向けた支援を進め、学校給食における地元食材の利用率向上を推進していきます。

高橋 大輔


表1 新島村における1日当たり給食数(式根島を除く)
表1 新島村における1日当たり給食数(式根島を除く)


図1 給食への月別出荷量
図1 給食への月別出荷量


写真1 直売所における地場野菜の販売
写真1 直売所における地場野菜の販売
写真2 給食センターに掲示されているポスター
写真2 給食センターに掲示されているポスター

写真3 耐風強化ハウスでの直売野菜の生産
写真3 耐風強化ハウスでの直売野菜の生産

写真4 冬に収穫する抑制トマト
写真4 冬に収穫する抑制トマト