研究の背景とねらい

八丈島における平地圃場でのアシタバ栽培は、夏季の高温で生育が緩慢になり収穫できない圃場が増えます。しかし、夏場の観光客需要への対応と、市場価格が高く推移するため(図1)、通年で市場に安定供給することが重要となります。そこで、通年出荷を目指して標高の異なる複数の圃場を組み合わせた栽培体系の確立を試みました。今回は標高約400mの水海山地区において、収穫期までの生育と夏季の収量調査を行い、高地栽培の可能性を明らかにしました。

図1 出荷数と平均単価の推移
図1 出荷数と平均単価の推移
図2 アシタバ成長の推移
図2 アシタバ成長の推移

成果の内容と特徴

  1. 低温期の生育について
    秋に播種したアシタバは、3月下旬までは低温のため生育が緩慢でした。しかし、4月以降に草丈が急速に伸び始め、6月下旬には草丈が90cm程度まで生育して収穫可能な大きさになりました(図2、図3)。4月と直前の3月の気温を詳細にみると、3月下旬から平均気温で11℃、平均日最低気温で8℃を越えていました。また、4月中旬以降は5℃以下になりませんでした。これらの差がアシタバの生育に影響したと考えられます。
  2. 夏季の収穫について
    収穫は夏季の全期間可能でした。出荷量は7月に比べ、8月は226kgと減少し、台風9号通過後の9月は194kg、10月は135kgと更に減少しました(図4)。この数値は島内全農扱いの出荷量(2005年度、島内アシタバ作付面積42ha)と比較すると、単位面積あたりの出荷量としては高い値でした。通常8月、9月の出荷量は大きく落込みますが、試験圃場での落ち込みは比較的小さく、良好な収穫が可能であることがわかりました(表1)。
  3. 収入の試算について
    2007年および過去4年間の7月から9月平均単価(表2)を基に、試験圃場における手取り収入を試算しました。2007年は例年になく単価が低く、およそ81万円、過去4年の平均価格だと142万円の手取り収入が得られた計算になりました(表3)。平地におけるアシタバの平均手取り収入は、年間1,790kg/10a(生葉出荷、2005年度、八丈町統計)収穫できるとして、全農出荷量の月別割合に準じて計算すると、年間95.4万円になります。今回の圃場では夏季の3ヶ月間のみで年間手取りに相当する収入を得ることが出来た計算になります。
  4. 新たな栽培体系について
    今回、高地圃場での栽培が可能であることがわかり、平地圃場と高地圃場を組み合わせた経営形態をとることにより、アシタバの通年出荷が可能となることがわかりました。

成果の活用と反映

この成果を八丈島アシタバ生産出荷組合など関係機関に周知し、夏季栽培(通年での安定出荷)の参考資料として活用してもらいます。

中村 佳亨



図3 アシタバの生育状況(1)
図3 アシタバの生育状況(2)
図3 アシタバの生育状況(3)
図3 アシタバの生育状況
図4 試験圃場における収穫量の推移
図4 試験圃場における収穫量の推移
表1 島内出荷量との比較(単位kg)
表1 島内出荷量との比較(単位kg)

表2 出荷価格(¥/kg)の推移
表2 出荷価格(¥/kg)の推移

表3 手取り収入の試算
表3 手取り収入の試算