三宅島における切葉作物の生産再開をめざして
研究の背景とねらい
大規模な噴火災害が起こった三宅島では、島民が帰島して3年が経過しましたが、現在もSO2を中心とした火山ガスが1,000t/日から3,000t/日噴出し、島内の植物や農作物に被害を及ぼしています。噴火前に基幹的作物であったレザーファンは、火山ガスの影響を受けやすく、従来栽培が盛んに行われていた地域では栽培が困難な状況にあります。一方、島内では風向きにより火山ガスの発生頻度が地域によって異なります。そこで、年間を通して火山ガスの発生が比較的少ない地域においてレザーファン栽培の可能性について検討しました。
成果の内容と特徴
- 切葉作物のSO2被害状況について2005年に調査したところ、SO2による被害は主に展開葉にみられ、さらにレザーファンはルスカスやコルジリーネなどの切葉作物に比べてSO2に敏感で、被害が出やすいことが分かりました。レザーファンの被害程度は、1時間あたりの平均SO2濃度が1.0ppm前後でわずかにみられ、2.0ppm以上では被害が拡大し、3.0ppm近くになると新葉を除く展開葉が全て褐変枯死しました(図1、図2)。
- 島内における火山ガスの発生状況をみると、高濃度地区に近い阿古試験区では年間を通して高濃度のSO2が断続的に発生しました。一方、島の北西部に位置する伊豆試験区や、南東部の坪田試験区では比較的低濃度の発生にとどまりました(図3、図4)。
- 火山ガスとレザーファンの生育・収量及び被害程度との関係を明らかにするため、伊豆試験区および坪田試験区でレザーファンを2006年6月に定植し、2007年4月から収穫調査を行いました。その結果、SO2被害により規格外となった収穫葉は、伊豆試験区で9%、坪田試験区で3%となり、いずれも1割以下となりました。このように、島内でSO2発生の少ない伊豆試験区や坪田試験区付近(島北部、北西部、南南東部付近)ではSO2による被害が少なく、レザーファン栽培が可能であると考えられました。
成果の活用と反映
三宅島の中でも、SO2発生の少ない伊豆試験区や坪田試験区付近(島北部、北西部、南南東部付近)では、レザーファン栽培の可能性が示唆されました。
今後も、三宅島における切葉作物の生産再開に向けて、レザーファンの他にも火山ガスに耐性があり、商品性の高い園芸作物の探索などに取り組んでいきます。
小林 和郎
図1 レザーファンの火山ガス被害 |
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図6 レザーファンの生育状況 (2007年10月25日:伊豆試験地) |