【背景・ねらい】

   大島管内のツバキは国内でも最大規模の油料生産があるだけでなく、枝物、苗木としての出荷、観光資源としても最重要の品目です。エダシャク類の幼虫は伊豆諸島のツバキなどで過去に大発生したことが知られ、利島ではハスオビエダシャクの多発により1972年などに大きな被害がありました。このため、大島支庁、利島村などと協力してエダシャク類の発生量を定期的にモニタリングし、計画的な防除対策などに活用しています。

 

【成果の内容・特徴】

① 5月におけるハスオビエダシャク若齢幼虫密度は0.57(頭/分/人)と昨年の2倍に増加し、トビモンオオエダシャクは2.91と3倍増でした(図1)。トビモンオオエダシャクは昨年、密度が高かった東部の一部に限らず、西部、南部、北部でも密度の高い地点が認められ、島内11箇所の調査地点全てで昨年の生息密度を上回りました。 

② 高密度地区を中心に薬剤防除の提案を行ったところ、5月下旬~6月上旬にツバキ生産組合によりBT剤の散布が実施されました(約45ha)。薬散後の6月16日に2回目の幼虫密度調査を実施したところ、防除実施地域の平均密度は散布前の16%に減じました。無散布地域では74%と減少する割合が小さく、薬剤散布の効果が高いことが明らかになりました(表1)。 

③ 幼虫の発生が終わった10月にツバキの食葉被害程度を調査しました。昨年に比べ、南部を除き島内全体的に食葉被害度が上昇し、特に西側の食葉被害度が増加している状況を確認しました(図1)。 

④ ツバキ林床土壌中の蛹密度調査を10月に実施したところトビモンオオエダシャク蛹の密度は0~1.79 採集数/人/分で、島内12ケ所の平均で0.58 採集数/人/分でした(表2)。前年の調査に比べ、約3倍に蛹密度が増加していることを確認しました。特に島の西部において増加傾向が目立ちました。

 

【成果の活用と反映】

   利島のトビモンオオエダシャク幼虫の発生は昨年に比べ多く、発生地域も拡大しました。越冬する蛹も昨年比3倍で、次年の幼虫発生がさらに多くなる可能性があります。次年度の春期若齢幼虫期防除の必要があり、5月中旬の密度調査の結果で散布地域、散布時期などを決めることが望ましいと考えられます。

 (竹内 浩二)

 

利島におけるトビモンオオエダエダシャクの多発生