【背景・ねらい】

   一般的にレモンは四季咲き性で、小笠原諸島における「菊池レモン」においても年3回の開花が確認されていますが、これまで各時期における特性解明は十分に行われていませんでした。そこで本試験では各時期の特性の詳細を調査して、今後の栽培管理の基礎資料にするとともに、過去未検討であった秋季開花由来果実の商業利用の可能性について検討を行うこととしました。

  

【成果の内容・特徴】

① 開花および着果特性

開花期は、春季開花は2月中旬から3月下旬、夏季開花は4月下旬から6月下旬、秋季開花は9月下旬から10月下旬で、開花期間は夏季開花が最長でした。二次生理落果後の葉果比は、春季開花が9.9、夏季開花が65.7、秋季開花が176.0で、最終着果量は、春季開花、夏季開花、秋季開花の順に多い傾向でした(データ省略)。

② 果実品質特性

果皮の厚さは、夏季開花が2.9mmと最も薄く、完全種子は、秋季開花が7.2粒と最も少なく、春季開花(18.9粒)および夏季開花(16.3粒)と比べて半数以下でした(表1)。じょうのうの厚さは、夏季開花が0.18mmと最も薄く、春季開花(0.33mm)の約55%でした(表2)。果汁歩合は、夏季開花が47.7%、秋季開花が44.0%と春季開花(40.8%)と比べて高い傾向でした。食味は、区間の差は認められませんでした(表3)。果形指数は、春季開花が他区と比べて低く、長球傾向でした(表4)。なお、収穫適期は、果汁歩合40%、果皮C.C値1.5以下、果実重150gを満たす期間として評価した結果、春季開花は、9月上旬から10月中旬、夏開花は11月上旬から下旬、秋開花は4月下旬から5月下旬となりました

 

【成果の活用と反映】

   以上の結果から、夏季開花由来の果実は果皮とじょうのうが薄くて、果汁歩合が高いこと、また、秋季開花由来の果実は含核数(種子数)が少ないことがわかりました。食味はいずれも春季開花果実と比べて同等のため、商業利用が可能と考えられます。特に、秋季開花の利用により、国内で類を見ない4~5月での商業利用が期待されます。今後、生産者および料飲事業者等へ情報提供を行い、農業および産業振興に寄与します。

  (池田 行謙)

 


※ 一般にレモンは果皮が黄色くなるまで熟したものが販売されていますが、果皮が青いうちに収穫したものをグリーンレモンと言います。

年間3回のグリーンレモン※の出荷を目指して