【背景・ねらい】

   三宅島では、噴火避難からの帰島後、依然として噴出の続く火山ガスに耐性のあるキキョウランを導入し、島の基幹作目として生産拡大を図ってきました。一方で、葉の先端部分が枯れてしまう「葉先枯れ」が多発し、出荷時の調整作業に大きな労力を要しています。葉先枯れは葉からの蒸散量が多くなるほど発生しやすくなることがわかっているので、遮光による蒸散量の抑制で葉先枯れ軽減を図り、キキョウランの生産振興の一助とすることを目指しました。

 

【成果の内容・特徴】

① 遮光による照度について

 ビニールハウス2棟を用い、1棟には2㎜目合いの寒冷紗を二重被覆し(2㎜×2㎜)、もう1棟には2㎜目合いの寒冷紗の上にさらに1㎜目合いの寒冷紗を被覆して(2㎜×1㎜)、キキョウランの栽培を行いました。

 天候により照度は大きく異なりましたが、全般に(2㎜×2㎜)のハウス内の照度は、屋外のそれの約20%~30%、(2㎜×1㎜)では約10%程度でした(表1)。

② 葉先枯れの進行程度

 葉先枯れの進行程度の計測は、①葉の先端から底辺までの長さ×②底辺の長さを測り、比較しました(写真1及び図1)。

 その結果、概ね(2㎜×2㎜)の方が(2㎜×1㎜)より枯れの進行が速い傾向がありました(図2、3)。すなわち、遮光率が高いほど葉先枯れの部分の面積が小さくなる傾向がありました。ただし、いずれの区においても、時間の経過とともに枯れは進行していきました。

③ 葉先枯れの発生割合

 各区において任意に抽出した葉100枚のうち、葉先枯れの発生している葉の数を調査しました。※葉先枯れは出荷調整が必要と判断されたもの

 両区とも葉先枯れの発生割合にほとんど差はなく、全体の9割以上に上りました(表2)。この調査では、遮光率が高いほど葉先枯れの進行が遅くなる傾向がありましたが、両区で発生割合には差がなく、ともに出荷調整が必要であると考えられることから、労力面での課題を残すこととなりました。

 

【成果の活用と反映】

   さらに遮光率を高めれば、枯れの発生割合を低下させることができることが示唆されましたが、生育自体に影響が出ることも考えられます。一方で、遮光率だけの着目にとどまらず、施肥・温度管理など様々な要素を分析しつつ、キキョウランの効率的な生産拡大に取り組んでいく必要があります。

(平塚 徹也)

 

キキョウランの高品質安定生産のために