【背景・ねらい】

   三宅島では、サトイモを代表する赤芽芋が広く栽培されてきました。2000年の噴火に伴う全島避難、2005年帰島時の混乱によって混在してしまった様々な系統から、優良な系統を選び出すことで三宅本来の赤芽芋の復活を目指しました。

 

【成果の内容・特徴】

① 赤芽芋系統の収集と栽培試験(一次選抜試験)

    三宅島内生産者から収集した5系統と噴火避難中に八王子元気農場で栽培されていた5系統との合計10系統を三宅事業所内試験圃場で栽培しました。その結果、どの系統も天候による影響などにより、収量は大きく年次変動しましたが、S3、S4、S8は収量が著しく劣る年があったため候補から除外しました(表1)。

② 外観による選抜(二次選抜試験)

   島内生産者による外観評価を行った結果、横縞模様の間隔が狭く、芽の生え際が小さいS7が最も高く、形状、子芋や孫芋のつき方、根の多さも、以前三宅島で栽培されていた系統に近いと評価されました。また、S9は芽の生え際は少し大きかったものの、S7と同様に評価が高くなりました(写真1)。外観評価の結果を重視し、S7、S9の2系統を最終選抜候補としました(表1)。

③ 現地栽培試験と食味調査(最終選抜試験)

   最終候補2系統(S7、S9)を、三宅事業所(坪田)の他、島内の圃場3カ所(阿古・神着・伊豆)で栽培し、栽培方法や環境の違いによる生育特性を調査しました。さらに、島内生産者、関係者を対象として食味調査をおこないました。

 現地栽培試験の結果、収量については、神着、伊豆ではS9が多く、阿古、坪田ではS7が多い傾向が見られましたが、すべての地区で、S7とS9の収量に大きな差はありませんでした(表2)。茹でた芋で食味調査を行った結果、食感、甘み、ねばり、ほくほく感、において、S7、S9の評価に差はありませんでした(表3)。

 

【成果の活用と反映】

   3年間の栽培試験で最終選抜候補としたS7とS9を現地栽培調査、食味調査を行い、島内生産者からの外観評価がより高かったS7を優良系統として選抜しました。今後は種芋の増殖を行い、三宅島地産地消部会等を通じて利用を検討していきます。

(外山 早希)

伝統の赤芽芋復活に向けて