【背景・ねらい】

   小笠原諸島の父島および母島は、植物防疫法上で他地域への移動が禁止されているアフリカマイマイ(以下、マイマイ:写真1)の発生地域です。特に母島では、毎年、深刻な農業被害が発生しています。本調査では父島と母島のマイマイの分布、密度および蔵卵個体率を調べることで長期的な変動を明らかにし、今後の防除対策に役立てます。

 

【成果の内容・特徴】

① 調査地点と発見地点

 調査は父島(48地点)および母島(50地点)の定点で行いました。各調査地点のマイマイの発見効率(個体/分:近似的に密度とする)を調査しました。各調査地点で採集された個体のうち殻高30㎜以上のものは卵の有無を確認することで蔵卵個体率を調査しました。その結果、生貝発見地点は、父島では直近3回の調査で継続して発見されている2地点のほか、1地点(図1、a)増加した3地点となり、発見地点率は6.3%となりました。母島は2014年の調査より10地点少ない29地点で発見され、発見地点率は78%から58%へと減少しました(図1、2)。

② マイマイの密度

 マイマイの密度は父島では2014年の0.005個体/分から微増し、0.023個体/分でした。父島で増加した地点は発見効率が0.6個体/分と父島内では最も高くなりました。一方、母島では2014年の0.71個体/分から減少し、0.24個体/分でした(図3)。

③ 蔵卵個体率

 蔵卵個体率は父島では0.058%、母島では0.016%でした(図4)。調査は例年雨の多いとされる5月上~中旬に計画・実施していますが、本年は調査実施前の降雨が極めて少なかったため、マイマイの活動が抑制され、特に母島での発見効率が低下したものと考えられました。

④ 本年度の調査結果の特徴

 父島では、マイマイの発見地点が増加し、その密度が高くなりました。また、該当地点は農業地域に隣接した場所であり、1985および1998年以来の発見であることから、農業生産物への影響を注視していくことが必要です。

 

【成果の活用と反映】

 マイマイは、父島では2000年代以降、市街地の限られた地域にしか分布していません。一方、母島では依然としてほぼ全域に高密度で生息しています。蔵卵個体は父島では少数ですが、母島では、常に一定数の蔵卵個体が存在していることから、今後も母島では高密度状態が続くと推測され、小笠原固有の陸産貝類との共存を図りながらの対策が必要です。

(小野 剛)


小笠原の生態系を守るため