【背景・ねらい】

 現在、パッションフルーツの電照栽培では白熱電球を使用していますが、製造を終了するメーカー
があり、今後入手困難になる恐れもあります。既に他の作物では代替光源としてLED を使用してお
り、パッションフルーツでは赤色LED が最も花芽分化促進効果があることが判明しています。しかし、
小笠原で主流である棚仕立て栽培では効果が不明なことから、赤色LED の効果を検証しました。 

【成果の内容・特徴】

① 赤色LED 電球と白熱電球との比較栽培試験
 農業センター内ハウスに「台農1号」を3株ずつ定植しました。白熱電球および赤色LED 電球(以下、LED)を20 m 2 あたり1個設置した区(以下、慣行電照区、LED 区)とLED を10 m 2あたり1個設置した区(以下、LED 倍量区)を設けました。電照は2017 年1月から3月までの間、毎日16 時30 分から3時間行いました。各区の開花数を3月末まで調査し、受粉した花にタグをつけ、収穫後に縦径、横径、果実重、糖度・酸度を調査しました。
 結果、開花開始時期は全ての区で2月第四週となりました。週ごとの開花数は、3月第二週ではLED 区が約3000 花に対して他の区は約4500 花でしたが、第三週ではLED 区約10,000 花に対し他の区は約8,000 花となりました。合計開花数は白熱電球とLED で差はなく、LED 電球の量を増やしても変わりませんでした(図1)。また、果実品質および収量は、全ての区で差はありません
でした(表1)。
② コストの比較
 電球設置費用および電気料金を比較しました。
 10a あたりの電球設置数は50 個となり、電球設置費用は白熱電球が7,500 円に対してLEDは20 万円と約27 倍となります。一方で、1ヵ月の消費電力は白熱電球270kWh に対してLED28kWh と約1/10 になり、年間電気使用料金は約17,000 円安くなりました(表2)。
 以上から、LED は12 年使用することで白熱電球よりトータルコストが低くなることが分かりました。

【成果の活用と反映】

 赤色LED 電球の導入コストが高額であるため、設置個数を減少させた場合の効果判定などコストダウン方法や、花芽分化促進効果以外の活用についても検討し、実用化を進めていきます。

(菅原 優)

 

 赤色LED電球を用いたパッションフルーツの電照栽培