【背景・ねらい】

 花き類(切葉、切花)は伊豆諸島農業の中核を占め、島しょ地域にとって重要な品目です。花き類の生産流通にとって最も厳しい真夏のオリンピックなどの新たな需要に対応するため、夏期における生産流通上の課題抽出と日持ち性の向上技術の開発を行いました。

【成果の内容・特徴】

① 島しょ産花き類、生産流通過程の環境調査試験
 島しょから東京都内までの流通過程での環境調査を行いました。夏期(7~8月)に、出荷箱内に自動記録計を同包し(写真2)、都内の主な市場へ出荷しました。市場到着後、状態を確認するとともに、記録計を回収し温度および湿度の解析を行いました(写真3)。試験対象は、大島(ブバルディア)、神津島(レザーファン)、三宅島(キキョウラン)、八丈島(フェニックス・ロベレニー(以下、ロべ)他)としました。
 結果、夏期輸送における出荷箱内の温度は、外気温度に合わせ変動すること(図1)、夏期(8月)は秋期(10 月)と比べ約10℃高くなり、夏期においてはより高い温度ストレスに暴露されることなどが明らかになりました。
② 夏期出荷花き類の日持ち性評価試験
 夏期における日持ち性を評価するため、夏期輸送後(または夏期輸送ストレス感作後)の切葉・切花を用いて、日本切り花日持ち試験(JFRT)に準じて試験(温度:25℃,湿度:40 ~ 60%,光度:1,000lx)を行いました(写真4)。
 結果、日持ち日数は、ブバルディア5~9日、レザーファン20 ~ 25 日、キキョウラン10 ~ 14日、ティ(コルディリーネ)10 日、ロべ5日、ルスカス90 日以上でした(表1)。
③ 日持ち性向上試験
 鮮度保持剤による日持ち性の向上効果を検討しました。鮮度保持剤は、切葉(ロべ、キキョウラン、レザーファン、ルスカス、チィ)では4種類、切花(ブバルディア)では、2種類(従来品および試験品)とし、JFRT に準じて試験を行いました。
 結果、ロべとルスカスでは、抗菌剤によって日持ち性が向上すること(表2)、ブバルディアでは新たなSTS 剤を用いることで日持ち日数が1~2日向上することが分かりました。

【成果の活用と反映】

 今回の結果を反映した夏期出荷マニュアルを作成します。マニュアルを農家出荷で活用することで、より高い品質の花き類の出荷を目指します。

(森本 直樹)

 

 島しょ産切葉・切花の品質向上に向けて