ロベチップと水産加工残渣の堆肥化研究  
~農水連携で、地域資源の循環利用をめざす~

背景・ねらい

 八丈農業を支えるフェニックス・ロベレニーの生産現場では出荷されずに多くの老朽木が圃場に放置されている現状がみられます。若木への更新には老朽木の処分と活用が課題でした。また、水産業を支えるクサヤなどの製造では多量の内臓が活用されずに廃棄されていました。このフェニックス・ロベレニーおよびクサヤ等の加工残渣(以下、残渣)を資源として活用するために、混合堆肥化方法について検討しました。

成果の内容・特徴

① ハマトビウオとクサヤモロの内臓について重金属分析を行った結果、ヒ素、カドミウム、水銀、銅、亜鉛について規制値を下回り、残渣を堆肥原料として使用することは法令上問題ないことがわかりました(表1)。


② 残渣と米ぬか、焼酎粕(麦)、ピートモスをそれぞれ混合して嫌気発酵試験を行い、pHと臭気(硫化水素)の測定を行いました。米ぬかを混合した試験区では、試験開始からpHが低下し嫌気発酵が進むとともに臭気はほとんど測定されませんでした(図1、表2)。焼酎粕、ピートモスを混合した試験区は、試験開始よりpHが上昇し、強い臭気が測定されました(図1、表2)。この結果、残渣の一次処理には米ぬかが適していることがわかりました。


③ 堆肥舎内で一次処理物、残渣およびロベチップを組み合わせ、 14~20日間おきに切り返しを行い堆肥化しました(写真1)。堆積時の温度変化を図2に、臭気(アンモニア)の変化を表3に示しました。残渣区では強い臭気が感じられましたが、一次処理物区では臭気はほとんど感じられませんでした。試作堆肥の成分および重金属類の成分分析結果を表4に示しました。一次処理物を添加した試作堆肥は有用成分であるリン酸とカリについても窒素以上に含有しており、肥料補給効果も期待できることがわかりました。試作堆肥のヒ素、カドミウム、水銀、銅、亜鉛の含有量は規制値を下回りました。

 
④ 作物生育への影響を把握するためコマツナ「夏楽天」、オクラ「エメラルド」、サンダーソニアを用いて施用試験を行いました。コマツナおよびオクラでは試作堆肥を施用すると市販堆肥(みのり堆肥)と同等かそれ以上の収量を確保できました(図3、4)。またサンダーソニアでは市販堆肥よりも、切り花長および切り花重が優れました(表5)。


⑤ 製造コストを、100kgの堆肥を製造する場合で試算すると、市販堆肥(1、000円/20kg袋)よりも安く(877円/20kg)なりました。

成果の活用と反映

 堆肥化技術の開発により、島の基幹産業である農業と水産業の廃棄物を循環活用できる道が開けました。今回開発した方法では、堆肥センターのような大がかりな施設はいりません。各農家の畑で堆肥作りが可能です。ただし、可搬式のチッパーが必要となるため、この点については、普及や行政部門に提言していきます。今後はこの堆肥化技術を島内における資源の有効利用方法の一つとして推奨し、普及活動を行っていきます。    (田中 優平)

 

表1 魚内臓の成分分析結果(乾物あたり)

表1

図1 一次処理時のpHの変化

図1 一次処理時のpHの変化

 

表2 一次処理時の硫化水素濃度の変化(ml/m3)

表2 一次処理時の硫化水素濃度の変化(ml/m3)

 

写真1 堆肥化工程

写真1 堆肥化工程

 

図2 試作堆肥堆積中の温度変化(→は切返しを示す)

図2 試作堆肥堆積中の温度変化(→は切返しを示す)

 

表3 試作堆肥堆積中のアンモニア濃度の変化(ml/m3)

表3 試作堆肥堆積中のアンモニア濃度の変化(ml/m3)

 

表4 試作堆肥の成分分析結果(乾物あたり)

表4 試作堆肥の成分分析結果(乾物あたり)

 

図3 コマツナの生育

図3 コマツナの生育

 

図4 オクラの生育

図4 オクラの生育

 

表5 堆肥施用と切り花品質(サンダーソニア)

表5 堆肥施用と切り花品質(サンダーソニア)