大島のアシタバ栽培におけるウラグロシロノメイガの被害実態

背景・ねらい

 アシタバは伊豆諸島の代表的な特産野菜で、大島では生産量、生産者数とも増加しています。東京都ではアシタバの主要な病害虫の防除のため有効薬剤の登録拡大等の事業を実施し、生産安定化を目指しています。しかし、近年、秋期のアシタバに今まで見られなかった蛾の幼虫による食害が拡がり、緊急の対策が必要になっています。そこでこの害虫の被害実態、発生生態を調査し、防除対策を講じます。

成果の内容・特徴

① この害虫の名前は?
 ウラグロシロノメイガ、学名はSitochroa palealis ([Denis & Schiffermuller], 1775)です。
② ウラグロシロノメイガの被害は?
 本虫による被害は大島全域、利島、神津島で認められました(表1)。特に大島北部での被害は顕著で、発生の多い圃場では大半の花、種子が食害により消失していました(写真1)。
③ ウラグロシロノメイガは何を食べるのか?
 本虫はアシタバ生産圃場でも飼育下でも蕾・花、若い種子を好んで食害しました(写真1)。飼育下で給餌すると茎葉部も旺盛に食べました。他の餌では僅かにセリ科のパセリとセルリーを食べましたが、他の科の植物は囓ることさえありませんでした(表2)。
④ 現在までに分かったウラグロシロノメガの発生生態
 大島での成虫の発生は9月初旬(あるいは8月末?)~10月上旬に観察されました。アシタバの花に微小な白色の卵を生み付け、幼虫は蕾・花、若い種子を好んで食害しました。幼虫は初期から旺盛に糸を吐き、その巣網内にいることが多かったです。大きくなった幼虫は地面に降りて土中で繭を形成しました。繭のなかではしばらく幼虫の形でいるようでした。天敵としては寄生蜂(2種のコマユバチ?)が頻繁に観察されました(写真2)。
⑤ 本虫の殺虫剤に対する感受性
 アシタバにおいて他害虫で使用できる薬剤は本虫にも殺虫効果がありましたが、現時点では本虫を対象に使用することはできません(表3)。野菜類で登録のあるBT剤でヨトウムシの防除を行った圃場では本虫の被害はほとんどありませんでした。本虫は薬剤には弱いようです。

成果の活用と反映

 なぞの害虫がウラグロシロノメイガであり、その生態も少しですが分かってきました。
薬剤の適用拡大などにより本虫が防除できる可能性も見えてきました。  (竹内 純)

表1 ウラグロシロノメイガの被害(2008年9、10月)

 

写真1 ウラグロシロノメイガ(上左と中央:被害状況、右:幼虫、下左:土中の繭、下中央と右:成虫)

写真1 ウラグロシロノメイガ(上左と中央:被害状況、右:幼虫、下左:土中の繭、下中央と右:成虫)

 

表2 ウラグロシロメイガ幼虫に対する給餌試験

 

写真2 寄生蜂の繭(左)と成虫(右)

写真2 寄生蜂の繭(左)と成虫(右)

 

表3