火山ガスが周辺作物等へ及ぼす被害状況

背景・ねらい

 火山ガスの濃度や降下先は不定期であり予測ができないためにこれに対応した調査や研究には非常な困難が伴います。今回、火山ガス等への被害状況を明らかにするため高濃度の火山ガスが流入した時を見計らいその地区周辺の植物と施設内作物等の被害状況を把握し、今後の三宅島での栽培に向けその有望性を探りました。

成果の内容・特徴

① ガスの経時的変化
 平成19年7月19日~24日に降下があったガスの経時的変化は図1に示すとおりです。火山ガス警報・レベル4(5ppm以上)は通算で約1時間、火山ガス注意報・レベル3(2~5ppm)以上は約13時間、高感受性者警報・レベル2(0.6~2ppm)では約13時間に及んだことがわかります。一方、施設内でのガス濃度はレベル2内にとどまり、ガスの滞留時間も通算で約13時間でした。               (ガス検知器:Gasman CROWCON社製使用)
② 露地(野外)植物・作物への被害状況
 露地ではマリーゴールド、ヒャクニチソウ(ジニア)、グラジオラス、スイカ、キュウリなどへの被害は著しく、葉に対してガス特有の褐色あるいは白色のネクロシス(壊死)を生じ活動葉を中心に被害は甚大なものとなりました。一方、アジサイ、ソテツ、ツバキ、カポック、トベラ、サカキ、サルトリーバラ、イソギクでは被害の発生はありませんでした。また、三宅島特産のアシタバには被害が認められはしましたがその程度は軽微なものでした。
③ 施設内作物への被害状況
 施設内ではガス濃度は露地と比べ低く推移しました。露地と施設での同一作物であるヒマワリを比べてみても施設の方が被害は軽微なものでした。またルスカス、コルジリーネ、クッカバラ、キキョウラン等には被害は認められませんでした。ガスが長時間、滞留した場合には被害を助長する恐れがありますが、今回のガス濃度と滞留時間では施設活用により被害を軽減する効果が認められました。

成果の活用と反映

 火山ガスに耐性のある作物等がおおよそ分かってきました。火山ガスの影響が少なく特産化が期待されるキキョウラン、クッカバラ等について、現在、生産者等と連携して実証栽培を行っています。火山ガスの耐性とともに収量、商品性などについても検討を進めています。今後も引き続き、他の季節の状況や他の作物に対する影響などの調査を継続し、有望視される品目について提案していきます。  (西村 修一)

二酸化硫黄の発生状況(平成19年7月19日~7月24日)(阿古)

二酸化硫黄の発生状況(平成19年7月19日~7月24日)(阿古)

参考)二酸化硫黄濃度の基準(三宅村火山ガスに対する安全確保に関する条例施行規則より)
レベル1:0.2ppm~0.6ppm(高感受性者注意) レベル2:0.6 ppm~2.0ppm(高感受性者警報)

レベル3:2.0ppm~5.0ppm(火山ガス注意報) レベル4:5.0 ppm以上(火山ガス警報)

 

表1 施設・露地別各品目への二酸化硫黄発生にともなう被害状況(平成19年7月19日~7月24日)

表1 施設・露地別各品目への二酸化硫黄発生にともなう被害状況(平成19年7月19日~7月24日)

(調査: 平成19年7月27日)

表2