桜の花も散って、木々の新緑がまぶしく輝く頃、伊豆大島の水温は20度を超えます。すると、島の沿岸ではイサキが盛んに釣れ始めるのです。体長が25cmくらいよりも小型のイサキには、体側に細いタテ縞があり、島の人たちはイノシシの仔と同じ「ウリンボウ」の名前で呼んでいます。このサイズの魚は主に塩焼きなどに調理されます。これより大型のイサキでは、縞模様が消えて身も厚くなるので刺身で食べるのに向いています。

タテ縞の鮮やかなイサキの小型魚

タテ縞の鮮やかなイサキの小型魚
縞の消えた大型魚

縞の消えた大型魚 

 ちなみに、魚のタテ縞とヨコ縞については逆に覚えている人も多いので、写真で確かめてください。頭から尾の方向へ走るのがタテ縞で、背中から腹方向へ走るのがヨコ縞です。

背中から腹方向へ走るヨコ縞(イシダイ)

背中から腹方向へ走るヨコ縞(イシダイ)


  イサキは大きなものでは体長が50cmに達し、伊豆諸島北部(大島~三宅島)が主な漁場です。上品な脂ののった白身魚で、刺身はもちろん、煮魚、椀種、ムニエル、フライなど、
何の料理にも向きます。ぶつ切りにしたイサキで出汁をとり、湯がいたアシタバ(明日葉)を浮かべた澄まし汁は、野趣あふれる島の郷土料理です。
  イサキの“旬”は5~6月頃で、“梅雨イサキ”と呼ばれ、最も脂ののる季節です。旬というのは、その魚が最も美味しくなる季節、あるいは出盛りのことをさします。そして魚では、一般に産卵の少し前に旬を迎えるものが多いのです。良質の卵をうむため、産卵の前に、魚はたくさんのエサを食べるので、太って脂がのります。しかし、産卵が終わると体は痩せ、色艶も褪せて食味は落ちてしまいます。イサキの産卵のピークは7~8月頃なので、その1~2ヶ月前が旬となるのです。
  さてこの記事を読んで、イサキの刺身が食べたくなった方もいるのではないでしょうか。今から魚屋さんへ行こうとしている人のために、ちょっとアドヴァイスをしましょう。魚の目利きで最も大切なのは、まず体がピンとしていて硬いものを選ぶことです。魚体がグニャっとして、腹が柔らかくなっているのは、鮮度が落ちている証拠です。そして目に濁りがなく、エラが鮮紅色をしていれば間違いがありません。新鮮で美味しい刺身を食べることができます。この選び方は、たいていの魚で使えますから、是非覚えておいてください。