伊豆諸島から小笠原にかけての海では、様々な色や模様をもつハタの仲間が見られます。カンモンハタやアカハタは、大きなものでも30cmくらいの小型ハタ類。一方、マハタやクエは体長1m以上に達する大型のハタ類です。そしてタマカイという種類では、体長が3mにも達するものも知られています。

小笠原でとれた体長2mのタマカイ
 小笠原でとれた体長2mのタマカイ

 ハタ類はいずれも白身魚で、淡泊な中に上品な脂があり、鍋物の主役として最高の素材です。そしてもちろん、刺身や煮魚、フライなどでも美味しくいただけます。
  ハタ類は海底に棲む底魚で、普通は釣りによって漁獲します。ところが底魚類は、一般にあまり移動しないので、同じ漁場で操業をくり返していると、だんだんと魚体が小型化してきます。これに早めに気がついて、その漁場を何年か休漁にしてやればよいのですが、そうでないと、やがて魚は釣りきられ資源が枯渇してしまいます。
  資源の枯渇を防ぐためには、このように休漁などの漁獲制限を行うのも一つの方法なのですが、もっと積極的に、養殖してしまおうという考え方もあります。つまり人工ふ化して育てようというやり方です。東京都小笠原水産センターでもアカハタの養殖研究に取り組み、成功をおさめることができました。

比較的小型のアカハタ(体長30㎝)
  比較的小型のアカハタ(体長30㎝)

 養殖をするには、まず産卵期を調べることから始めます。調査船の乗組員に頼んで、毎月魚を釣ってもらい、卵巣や精巣の成熟具合を調べるのです。一年を通して調査した結果、産卵期は初夏から盛夏にかけてであることがわかりました。また、メスの平均体長は27cmであったのに対して、オスの平均体長は32cmと5cmも大きかったのです。ということは、アカハタではメスよりもオスの成長が速いのでしょうか。そうではありません。アカハタなどのハタ類は、小さいときはメスで、成長するにしたがってオスに性転換するのです。なぜなら、小型魚はすべてメスで、オスは大型魚にしか見られなかったからです。
  このように魚類では、性転換するものが結構見られます。ハタ類のようにメスからオスへ性転換するものにはベラやブダイの仲間が、逆にオスからメスへ転換するものにはクロダイやコチの仲間がよく知られています。