前回は夏休み向けのハゼ釣りをご紹介しましたが、今回はもっと簡単な川の釣りについてお話ししましょう。釣りの仕掛けは、そこらで切ってきた2mほどの竹竿に糸と鈎を付けるだけ、ウキもオモリもいりません。そして浅瀬の底石をひっくり返し、川虫を捕まえてエサにします。釣り人は浅瀬に立ち込み、下流に向かって竿先を水中に入れて、流れと平行に竿を前方に出したり手前に引いたりを繰り返します。この姿が、按摩さんが杖をついて歩く様子に似ていることから「あんま釣り」の名前があります。

子供でも釣れるあんま釣り
 魚がかかると、竿を手前に引いた時、ブルブルッという小気味よい手応えがあります。釣れるのは主にオイカワやウグイといった体長10~15cmほどの小魚です。釣り場はあきる野市の秋川がおすすめです。この釣りでは、初めての方でも驚くほど簡単に釣れます。以前、親子連れを対象に川の自然観察会を開いた時に、この釣り方を教えました。観察会の終わる頃、一組の親子がやってきて「これまで私たちは、5回釣りに行きましたが1匹も釣れませんでした。ところが今日は20匹も釣れました」と大変に喜んで下さったのです。

オイカワのオス(上)とメス(下)

オイカワのオス(上)とメス(下)


 オイカワやウグイは流れの速い清流に棲んでおり、川魚独特の臭みもあまりありません。釣った魚はすぐに氷で保存し、内臓を取ったあと唐揚げにしてみて下さい。この時、一度揚げた後、冷ましてからもう一度揚げると、頭も骨も気にならないくらいサクサクと食べることができます。また、揚げた魚を三杯酢に漬けて冷蔵庫に保存しておけば、晩酌の肴に最適です。
 かつての秋川には、それこそ無尽蔵と思われるくらいオイカワやウグイが泳いでいました。ところが1960年代末、この川沿いに大規模な道路工事が行われたのです。工事の土砂は大量に川の中へ落とされ、魚の隠れ場となる深い淵を埋めてしまいました。やがて、水鳥のカワウが増え、隠れ場を失った魚たちはかれらに狙われ、数を減らしてしまったのです。このように、一度自然を壊してしまうと、その影響は何十年も後まで残るということを、決して忘れてはなりません。