多摩川だより1号 イワナとヤマメの自然交雑種を採集しました

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イワナとヤマメの自然交雑種

 

 多摩川水系日原川支流での調査でイワナとヤマメの自然交雑種(以下、交雑種)を採集しました。日原川は、東京都最高峰雲取山(標高2,017m)を源として奥多摩町を流れる流程約21kmの典型的な渓流です。

写真1 日原川の景色

 

 調査は11月下旬に、日原川との合流点から上流に約200m、標高差100mの区間で実施しました。採集魚は、合流点近くでは、ヤマメ(写真2上)主体、上流へ行くに従い、ニッコウイワナ(写真2下)主体となりました。

写真2 ヤマメ

写真2 ニッコウイワナ 

写真2 ヤマメ(上)とニッコウイワナ(下)

 

 交雑種は、調査区間の最上流部で、ニッコウイワナに混じり1尾採集されました。魚体は全長22.1cm、体重109gと比較的大型個体で、交雑は数年前に起こったと考えらました。 

 交雑種の顔つきはイワナ似で、体側にはヤマメ由来のパーマークが薄く確認できます(写真3)。背面には虫食い模様があり、その模様からイワナとヤマメの交雑種は一般的に「カワサバ」などと呼ばれます。

写真3 イワナとヤマメの交雑種

写真3 イワナ×ヤマメの交雑種

 

 日原川水系では、同様の交雑種が以前から時折採集され、この地域では“うんねい”という俗称で呼ばれていたそうです。

 後日、ミトコンドリアDNAによる解析で、母親がニッコウイワナであることがわりました。

  

ヘビを食べたヤマメ

  渓流魚の話題をもう一つ。

 少し前の話になりますが、平成24年5月、多摩川の支流、浅川の最上流支流”醍醐川“での調査でヘビを食べたヤマメを採集しました。

 このヤマメは、全長23cm、体重173g、口から尻尾がはみ出した状態(写真4上)で採集されました。尻尾を引っ張り出してみると、全長約40cm、体重20gのヘビが出てきました(写真4下)。ヘビは頭がすでに消化された状態でした。

 漫画などで、イワナがヘビを食べると紹介されていますが、ヤマメがヘビを食べたという話は聞かないので、ヤマメの貪欲な食性を知る、貴重な記録となりました。

写真4 ヘビを食べたヤマメ

写真4 食べられたヘビ

写真4 ヘビを食べたヤマメと食べられたヘビ