多摩川だより4号 汲み上げアユ調査を実施しました

     PDFはこちら  多摩川だより4号 [311KB pdfファイル] 

江戸前アユ

 近年の多摩川は河川環境などの改善によって、多くのアユが遡上するようになり、これらは「江戸前アユ」と呼ばれています。しかし、河川横断構造物(堰等)が多く、一部の構造物付近ではアユの滞留が認められています。そこで江戸前アユを多摩川流域全体で有効活用していくため、内水面漁連により汲み上げ事業が実施されています。この事業は中流部で定置網により採捕したアユをトラックで上流部に運搬して放流するというものです。これまで上流部では、各漁協が養殖業者から購入したアユを放流しており、それらが釣られるアユの大部分を占め、江戸前アユの上流部での生態については不明な部分もありました。

 

汲み上げたアユの成長・成熟

 そこで当センターでは、今年度から汲み上げたアユの上流部での詳細な生態について調査を行っています。この調査は多摩川中流部で採捕したアユ約3,500尾を、上流部の支流に放流して定期的に採集し、その成長や成熟について調べるというものです(図1)。この調査の結果、5月に全長5.5cmで汲み上げたアユは、その後、順調に成長して9月には15cmほどに達することが明らかとなりました(図2)。さらに10月には成熟して精子と卵を持つことも確認しました(図3)。
 

図1 汲み上げたアユを放流した支流 

図1 汲み上げたアユを放流した支流

   

汲み上げアユ 

 上流部に汲み上げた江戸前アユは、「汲み上げアユ」と呼ばれ釣り人にも親しまれています。今回の調査結果から、汲み上げアユは十分に成長・成熟し、産卵にも関与していると考えられました。しかし、アユは生を受けてから1年で生活を終える年魚であり、環境の変動を受けやすい魚です。当センターでは今後も継続して同様の調査を行い、より詳細に汲み上げアユの生態について明らかにしていく予定です。

 

図2 成長した汲み上げアユ

図2 成長した汲み上げアユ

 

図3 成熟して卵を持った汲み上げアユ

図3 成熟して卵を持った汲み上げアユ