体側に小判型斑点のある河川型ヤマメ

体側に小判型斑点のある河川型ヤマメ


標準和名

ヤマメ(河川型) サクラマス(降海型、湖沼型)

学名

Oncorhynchus masou masou (Brevoort)

地方名

ヤマメ(東京など)、ヤマベ(北海道)、ヤモ(栃木)、エノハ(九州)

分類

サケ目、サケ科、サケ属

形態

河川型は体側に小判型斑点(パーマーク)をもち、最大体長は30cmくらい。降海型、湖沼型は体色が銀白色で小判型斑点は消失する。最大体長は70cmくらい。

分布

カムチャッカから日本列島、台湾までの極東沿岸域とその流入河川に分布する。東京都では、標高300mくらいより上流の渓流域に河川型(体長約30cm)のヤマメが生息する。降海型のサクラマスは東京湾に下って体長40cmくらいに達する。降海型は、多摩川水系の他、荒川や江戸川でも見られる。多摩川上流の奥多摩湖(小河内ダム)には体長50cm以上に達する湖沼型サクラマスが生息する。これらの各型は全て同一種で、同じ親から生まれたものが、成長のある時期に河川型あるいは降海・湖沼型に分化する。

生態

産卵期は秋で、東京では10月から11月。主な産卵場は河川上流の支流域。ふつうメスとオスがペアになって産卵する。メスがヒレで川底の砂利を掘って細長い窪みをつくり、その中に産卵すると同時にオスが放精する。産卵が終わるとメスは砂利を埋め戻す。体長20cmのヤマメで産卵数は200粒程度、体長50cmのサクラマスでは3000粒以上も産む。卵径は約4mmから7mmで、ヤマメ卵よりもサクラマス卵が大きい。
 受精卵は水温10℃だと約40日でふ化する。ふ化仔魚は体長約3cm。成長には個体差があり、一般に川の大きな本流域で早く(産卵1年後で体長18cm程度)、川の小さな支流域で遅い(産卵1年後で体長10cm程度)。河川型では、ふ化後2年から3年で体長20cmから30cmに達して成熟する。ふつう寿命は2年から3年。一方、降海型はふ化後約1年の秋に海へ下り、その半年後の5月から6月までに体長40cmから50cmに成長して川へ上る。そして、秋に産卵して一生を終える。寿命は2年。
河川におけるヤマメの餌は、主として水生昆虫の幼虫(川虫)で、この他ハエ、蚊、ハチ、ミミズなどの陸上由来の生物も食べる。降海型や湖沼型のサクラマスは、小魚やエビ、イカなどを食べて大型に成長する。
多摩川のサクラマスは、河川中・下流域の汚濁が著しかった1950年代後半から約40年間姿を消していた。しかし水質の改善とともに、近年少数ではあるが復活が認められており、東京都水産試験場奥多摩分場ではその資源増大研究を進めている。なお、東京湾や多摩川などで時折サケOncorhynchus keta (Walbaum)が採集されるが、東京は本種の本来の分布域ではなく、これらは迷い込みや市民団体の稚魚放流に由来するものと考えられる。

資源の利用と保全

ヤマメは人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)であるが、都内河川では1950年から1960年代の高度経済成長期の乱開発によって、一時は「幻の魚」と呼ばれるくらい減少してしまった。しかし1961年に、奥多摩分場が全国で始めて養殖に成功し、人工ふ化魚の大量放流が可能となった。このため、現在奥多摩の渓流では多くの釣り人がヤマメ釣りを楽しむことができる。また、同分場の技術開発によるヤマメ養殖業と釣り堀は多摩地域の地場産業として定着している。

調理法

ヤマメ、サクラマスともに美味な魚として知られている。ヤマメの調理法は塩焼きが一般的だが、燻製や甘露煮などの加工品も市販されている。1998年に奥多摩分場が開発したニューブランド養殖魚「奥多摩やまめ」は、サクラマスと同様体長40cm以上の大型魚となり、刺身や鮨種などにも活用できるので、新たな地域の特産品として人気が高い。

銀白色の降海型サクラマス

銀白色の降海型サクラマス

奥多摩やまめ(奥)と普通のヤマメ(手前)

奥多摩やまめ(奥)と普通のヤマメ(手前)


東京湾で捕れたサケ

東京湾で捕れたサケ