ウナギ


標準和名

ウナギ

学名

Anguilla japonica Temminck and Schlegel

地方名

特になし

分類

ウナギ目、ウナギ科、ウナギ属

形態

体色は、背部から体側にかけて灰褐色。腹部は淡色。体は伸長形でオスよりもメスの方が大型になる。最大体長はオスで60cm、メスで90cm程度。時に1mを超えるものもある。

分布

日本列島および朝鮮半島、中国、台湾などに分布する。産卵海域はマリアナ諸島付近とされている。東京では多摩川、荒川、江戸川水系などの上流から下流部に生息。小河内ダム完成以前の多摩川では、山梨県内まで遡上がみられた。現在、都内各河川では、毎年春先に東京湾からの稚魚の遡上が観察される。また現在は、河川漁業協同組合の手によって稚魚の放流も行われている。この他、東京湾内の浅場でも生息が認められる。

生態

川や沼で成長し、降河して海で産卵する降河性の回遊魚である。親魚は晩秋に川を下り、東京湾から遠くマリアナ近海まで産卵回遊する。降河時の親魚はまだ成熟していない。産卵期は6月頃と考えられており、この時期、マリアナ近海ではふ化後間もない本種の仔魚が採集されている。卵は球形で、直径は約1mm。水温23℃で、受精後38時間から45時間でふ化する。ふ化仔魚は、その後レプトケファルス(葉形幼生)と呼ばれる扁平な魚体となり、海流によって日本列島付近に半年ほどかけて運ばれる。河口付近にたどり着いた仔魚はシラスウナギと呼ばれる半透明なウナギ型に形態を変化させ、12月頃から3月頃に河川に入って遡上を開始する。このころには体色は黒化する。河川や沼では、エビ類や小魚などを主食として育ち、7年から15年ほどして体長50cmから1mに達して産卵のために川を下るとされている。また、ウナギの中には海から川へ上らず、内湾域で成長するものも確認されている。近年、三重県の養殖研究所のグループがウナギの人工ふ化養殖の実験に成功している。

資源の利用と保全

戦前の多摩川は、利根川や琵琶湖、浜名湖などと並んで、全国水系別ウナギ漁獲高で第5位に輝いている。また、同じく戦前の東京湾では、年間400トンものウナギ漁獲が記録されている。江戸前の食文化の一つであるウナギの蒲焼きは、東京湾に多産するウナギが用いられていた。この名残で、今でも品川区の旧東海道沿いにはウナギの蒲焼屋が多くみられる。
 本種は、都内河川や東京湾の水質が最悪であった1960年代後半から1970年代前半に一時期姿を消していたが、現在は再び見られるようになった。ただし、資源量に往年の面影はない。
 ウナギは夜行性であり、昼間は物陰に隠れる性質がある。河川改修工事等による川岸のコンクリート化などで、岸辺の植物や転石などが失われ、本種の生息場は大幅に減少したと考えられる。今後は河川の水質を改善するとともに、生物に配慮した河川工事法の導入などをはかっていく必要がある。同様に、東京湾のウナギ主生息場である浅場、干潟の回復も急務である。

調理法

ウナギは血液に毒があるため刺身では食べない。しかし、この毒は加熱分解するので、蒲焼きなどに調理すれば問題ない。

荒川河口でとれた半透明のシラスウナギ

荒川河口でとれた半透明のシラスウナギ

ウナギのレプトケファルス

ウナギのレプトケファルス