ニジマス


標準和名

ニジマス

学名

Oncorhynchus mykiss (Walbaum)

地方名

マス(全国)

分類

サケ目、サケ科、サケ属

形態

幼魚時は体側に小判型斑点(パーマーク)をもつが、体長25cmくらいよりも大型魚では消失する。陸封型の最大体長は60cmくらい。体側の頭部から尾部にかけて一条の橙色の帯があり、これを虹に見立てて英語でレインボートラウトと呼ぶ。ニジマスはこの訳語。降海型はスチールヘッドトラウト。

分布

元来日本には分布しない外来魚。カムチャッカからアラスカを経てメキシコ北部にいたる北米大陸太平洋岸とその流入河川に分布。日本には1877(明治10)年に米国カリフォルニア州産の卵が初めて輸入された。この時の卵は、東京四谷の井戸水でふ化したあと西多摩郡柚木村(現青梅市)の養魚池で飼育したとの記録がある。その後米国から何度か卵が移入され、現在はほぼ全国的に養殖が行われている。
 東京都では、釣り人を対象にして多摩地域の渓流や奥多摩湖に毎年養殖魚が放流されている。ただし、これらの放流魚が自然繁殖している場所はほとんどない。その理由は、ほとんどの魚が放流後間もなく釣られきってしまうためと考えられている。

生態

前述のように自然産卵はほとんど認められないが、養殖池から逃げた魚や放流魚の生残個体がまれに河川で産卵する。産卵期は秋から冬で、東京では10月から1月。主な産卵場は河川上流の支流域。ふつうメスとオスがペアになって産卵する。メスがヒレで川底の砂利を掘って細長い窪みをつくり、その中に産卵すると同時にオスが放精する。産卵が終わるとメスは砂利を埋め戻す。体長30cmで産卵数は2000粒程度、体長60cmでは4000粒以上も産む。卵径は約4mmから6mmで大型魚の卵径は小型魚よりも大きい。
 受精卵は水温10℃だと約30日でふ化する。ふ化仔魚の体長は約3cm。飼育水温にもよるが、養殖魚ではふ化後1年で体長18cm程度、2年で30cmに達し、オス・メスともに一部が成熟する。ふ化後3年では40cm程度に達し、ほぼ全個体が成熟する。寿命は5年から6年以上。一度の産卵で死なず、何回も産卵する。
河川におけるニジマスの餌はヤマメと同様と考えられ、水生昆虫の幼虫(川虫)の他、ハエ、蚊、ハチ、ミミズなどと思われる。

資源の利用

ニジマスはヤマメ、イワナなどと同様人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)である。都内に9ケ所ある渓流の一部区間を利用した管理釣り場(河川釣り堀)の放流魚も大半が養殖ニジマスである。この養殖魚は手軽に釣れるので家族連れなどに利用されている。これらの管理釣り場ではバーベキュー施設を併設してあるところが多く、最近のアウトドア志向もあって人気が高い。また、本種の養殖業は多摩地域の地場産業として定着しており、生産魚は地元の旅館などで利用されている。

調理法

塩焼きが最も一般的だが、大型魚は刺身でも美味。この他、燻製や甘露煮などの加工品も市販されている。

ニジマス釣堀は多摩の地場産業

ニジマス釣堀は多摩の地場産業

ニジマスの人工採卵

ニジマスの人工採卵


養殖ニジマスの給餌

養殖ニジマスの給餌