ウグイ


標準和名

ウグイ

学名

Tribolodon hakonennsis (Gunther)

地方名

ハヤ・ホンバヤ(東京)、クキ(関東)、アカハラ(北海道)、アカウオ(長野)、ウグイ(関西)、イダ(九州)

分類

コイ目、コイ科、ウグイ属

形態

体は細長く側扁形。背部は暗青褐色で体側から腹部は銀白色。産卵期には、三列のオレンジ色の縦条が現れる。最大体長は30cm程度。

分布

北海道から九州に至る日本列島各地、およびサハリン、南千島。東京では多摩川、荒川、江戸川水系などの上流から下流域に生息、自然繁殖している。
 各河川の下流部には、近縁種のマルタTribolodon brandti  (Dybowski)が生息する。本種は東京湾と河川を往復し、最大体長は50cmほどに達する。

生態

東京での産卵期は4月から5月。川の浅瀬にオスとメスが数百匹の群となり底石の表面に卵を産み付ける。卵径は2mm前後。水温10℃から15℃で4日から5日ほどでふ化する。ふ化仔魚の体長は7mm程度。ふ化後1年で体長は8cmから10cm程度、2年で10cmから14cm程度、3年で16cmから18cm、4年で18cmから20cm程度に達する。満2年以降成熟するという。奥多摩湖では、産卵期に湖への流入河川へ遡上して浅瀬の底石に産卵する。
 食性は雑食性であり、藻類などの植物性餌料や水生昆虫類など動物性のエサを食べる。

資源の利用と保全

本種は比較的汚濁に弱く、経済高度成長期に大幅に数を減らした。かつての多摩川では上流から下流域を通じて最も生息個体数の多い魚といわれていたが、現在は水のきれいな上流域が分布の中心となっている。
 本種は人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)で、川虫(水生昆虫)や練りエサ、あるいは毛鈎等で釣獲される。アユ釣りなどよりも道具立てが簡単で、大人はもちろん子供にも容易に釣れる。多くの場合オイカワと混獲される。漁業権対象魚種であるので、河川漁業協同組合では、産卵期に川の浅瀬に人工産卵床を造成し、保護・増殖をはかっている。
近年カワウの増殖とともに資源の減少が伝えられているが、これにはカワウ個体数の増加もさることながら、河川改修による生息環境の悪化も係わっていると考えられる。今後は水質の改善とともに、隠れ場となる岸辺の植生や、消失した深い淵の復元などが必要であろう。

調理法

小型魚は唐揚げや南蛮漬にすると骨ごと食べられる。一度白焼きして乾燥させた後に甘露煮にすると川魚独特の風味があって珍味。長野県では魚田にする。

海に下るマルタ

海に下るマルタ

漁業協同組合が造ったウグイ人工産卵床

漁業協同組合が造ったウグイ人工産卵床