コイ


標準和名

コイ

学名

Cyprinus carpio (Linnaeus)

地方名

マゴイ(全国)

分類

コイ目、コイ科、コイ属

形態

体色は黄褐色でフナに似るが、口の左右に長短4本の口ひげを有することで区別できる。全長は1m以上に達する。体高の低い野生型(ノゴイ)と体高の高い養殖型(ヤマトゴイ)があり、現在は放流により後者が圧倒的に多くなった。この他、食用に育種されてウロコの少なくなったカカミゴイやカワゴイ(両者をあわせてドイツゴイということもある)、観賞用のイロゴイ(ニシキゴイ)がある。

分布

元来ユーラシア大陸原産といわれているが、古来より世界各地に移殖されており、現在は世界中に分布する。東京では各河川の中・下流域や湖沼に生息する。奥多摩湖にいるものは放流魚。

生態

前述のように、現在都内では野生型のノゴイはほとんど見られず、放流由来のヤマトゴイが多数を占めている。産卵期は春から初夏で、東京では主として4月から6月。主な産卵場は河川中・下流域や湖沼の水草の茂み。水草のない場合は、仕方なく浮標物や底石に産み付ける場合がある。多くは明け方に、複数のオス・メスが群れて産卵する。産卵数は親魚の大きさによって異なるが、体長70cmくらいのものでは一産卵期に100万粒以上産むものがある。
 卵径は2mmほどで、受精卵は水温15℃だと約1週間でふ化する。ふ化仔魚の体長は約5mm。飼育水温にもよるが、養殖魚ではふ化後1年で体長10cmから15cm程度、2年で40cmに達し、オス・メスともに一部が成熟する。ふ化後3年でほぼ全個体が成熟する。寿命は長く天然魚で20年以上から30年以上、飼育魚では100年近く生きるものもある。一度の産卵で死なず、何回も産卵する。
雑食性で、天然餌料は、エビ類、貝類、水生昆虫など動物性餌料のほか、水草や水底の有機物なども食べる。
本種は比較的汚濁に強い。このため、神田川や石神井川、隅田川など都市部河川の水質汚濁が改善された1970年代半ば頃から1980年代にかけて、周辺住民の強い要望で東京都水産試験場産のコイが放流された。現在、これら都市部の河川で見られるマゴイやイロゴイの多くは、かつてこの時期に放流されたものである。

資源の利用と保全

コイはフナ同様人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)で漁業権魚種に指定されている。都内各河川では多くの釣り人が本種を釣っているが、産卵場や稚魚の隠れ場となる水草の植生が失われている場所が多い。また本種の本来の生息場である深くて大きな淵が失われてしまった。今後は、これら生息環境の回復が課題である。

調理法

コイは泥臭さを抜くために、漁獲後1週間から2週間清水中で飼育する必要がある。
また、胆嚢(いわゆる「苦肝」)をつぶすと身が苦くなってしまうので、腹を割いたら、まずこれを取り除く。小骨の多い魚なので“洗い"にするときはなるべく薄くそぎ切りにし、氷の上に乗せて酢味噌で食べる。“コイこく"や甘煮は、脂ののる冬季が特に美味。

産卵するニシキゴイ

産卵するニシキゴイ

コイは川魚の王様

コイは川魚の王様


ノゴイ(上)とヤマトゴイ(下)
ノゴイ(上)とヤマトゴイ(下)