神田川で採集されたアユ稚魚

神田川で採集されたアユ稚魚


標準和名

アユ

学名

Plecoglossus altivelis altivelis Temminck and Schlegel

地方名

アイ(全国)

分類

サケ目、アユ科、アユ属

形態

背側は青味を帯びたオリーブ色。腹側は銀白色で胸ビレ付近の体側に長円形の黄色い斑紋がある。最大体長は25cm程度が一般的だが、まれに30cmに達するものがある。

分布

日本列島およびその周辺の朝鮮半島、琉球列島、台湾などに分布する。かつて奄美諸島から台湾にかけて生息していたリュウキュウアユPlecoglossus altivelis  ryukyuensis Nishidaという亜種は、生息環境の悪化により奄美諸島以外では絶滅した。
 東京では、多摩川、荒川、江戸川の各水系のほか神田川などでも東京湾からの天然遡上魚が観察される。このほか、河川漁業組合の手によって琵琶湖産アユ稚魚などの放流も行なわれており、河川の上流から中・下流域まで広く分布する。また本種は奥多摩湖で自然繁殖のみられる年がある。これは山梨県内の丹波川に放流されたものが産卵し、奥多摩湖へ下って成長したもの。

生態

東京湾からの天然アユ稚魚の遡上は毎年3月下旬に始まり、6月上旬まで続く。この頃の体長は5cmから8cmくらい。河川に遡上したアユは川底の石に付く珪藻や藍藻を食べて成長し、体長20cmから25cmほどに育って10月から11月頃に産卵する。産卵場は川の浅瀬で、多数のオス・メス親魚が群になって夕刻から夜間、川底の小砂利に卵を産み付ける。卵径は1mm足らずで、2週間から3週間ほどでふ化して体長5mmほどの仔魚となる。この仔魚は川を下って東京湾にはいり、プランクトンなどを食べて冬の間を過ごす。そして、河川の水温が上昇する春先になって川を遡上するのである。寿命は普通1年で、湧水のような暖かい環境で過ごしたものは翌年まで生き残ることがある。
川に上ったアユは、エサである底石に付いた藻類を確保するために一定面積の川底を縄張りにする。そして他のアユがこの縄張り内に侵入すると、これに体当たりをして追い払う。この習性を利用したのがアユの“友釣り"で、掛けバリをつけたオトリアユを縄張り内に泳がせてやり、体当たりしてきた野生のアユを引っかけて釣り上げるのである。

資源の利用と保全

アユは、日本の川釣りの中で最も人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)である。かつての多摩川は水質が良く、日本でも有数の良質アユの産地であった。このため、多くの釣り人が訪れ、またアユ料理を主体とする沿川の川魚料亭も多かった。しかし、1950年代後半以降の高度経済成長期に水質が悪化し、1960年代後半から1970年代前半のほぼ10年間、天然アユの遡上が認められなかった。1970年代半ばになって、水質の改善とともに少しずつ遡上量が増え、最近では一年間に100万匹を越すアユ稚魚の遡上が見られる年もある。
 都内には多摩川沿川でアユ養殖を営む業者もあり、食用のほか、友釣りのオトリアユとして販売している。

調理法

塩焼きが最も一般的。このほか背越しや煮浸し、甘露煮などの調理法がある。アユの内臓を塩辛にしたものが珍味「うるか」である。

川底の石につけられたアユのハミアト

川底の石につけられたアユのハミアト

多摩川の川底に産み付けられたアユの卵

多摩川の川底に産み付けられたアユの卵


毎年東京湾から天然アユの上ってくる神田川

毎年東京湾から天然アユの上ってくる神田川