オイカワ

産卵期のオイカワ(上:メス, 下:オス)


標準和名

オイカワ

学名

Zacco platypus  (Temminck and Schlegel)

地方名

ガンガラ・バカッパヤ・ヤマベ(東京)、ジンケン(長野)、オイカワ(滋賀)、ハエ(近畿)

分類

コイ目、コイ科、オイカワ属

形態

体は細長く側扁する。背部はオリーブ色で、体側から腹部は銀白色。体側には不規則なピンク色の横帯がある。オスは夏の産卵期になると臀ビレが伸長するとともに、緑色や橙色の鮮やかな婚姻色に彩られ、頭部やヒレに多数の追星が出現する。一方、メスでは大きな変化は見られない。最大体長18cm程度。

分布

関東以西の本州、四国の瀬戸内側および北九州に分布する。ただし現在では、主として放流用の琵琶湖産アユ稚魚に混じり、他の地方にも分布する。国外では朝鮮半島、中国などに生息する。
 東京では多摩川、荒川、江戸川水系などの中流から下流域に生息、繁殖している。奥多摩湖の生息魚は、アユ等に混入して放流されたもので自然繁殖している。
 1960年代後半以降、多摩川水系の一部では近縁種のカワムツZacco temminckii  (Temminck and Schlegel)が自然繁殖しており、これは放流用の琵琶湖産アユ稚魚に混じって移入されたものと考えられる。

生態

東京での産卵期は6月から8月。川の浅瀬にオスとメスの親魚がペアーになり底石の表面に卵を産み付ける。卵径は1.5mmから2mm程度。水温25℃下で約50時間でふ化する。ふ化仔魚の体長は5mm弱。ふ化後1年で体長は7cmから8cm程度、2年で10cmから11cm程度、3年で13cm以上に達する。千曲川ではメスは満1年以降、オスは満2年以降成熟するという。奥多摩湖では、産卵期に湖への流入河川へ遡上して浅瀬の底石に産卵する。
 食性は雑食で、底石の付着藻類などの植物性餌料のほか水生昆虫類など動物性のエサも食べる。本種は比較的汚濁に強く、経済高度成長期の汚濁下の河川でも普通に見られた。

資源の利用と保全

高度経済成長期以降増えた魚である。本種は人気のある釣り対象魚(ゲームフィッシュ)で、川虫(水生昆虫)や練りエサ、あるいは毛鉤等で釣獲される。アユ釣りなどよりも道具立てが簡単で、大人はもちろん子供にも容易に釣れる。多くの場合ウグイと混獲される。漁業権対象魚種であるので、河川漁業協同組合では、産卵期に川の浅瀬に人工産卵床を造成し、保護・増殖をはかっている。
近年カワウの増殖とともに資源の減少が伝えられているが、これにはカワウ個体数の増加もさることながら、河川改修による生息環境の悪化も係わっていると考えられる。今後は隠れ場となる岸辺の植生や、消失した深い淵の復元などが必要であろう。

調理法

唐揚げや南蛮漬にすると骨ごと食べられる。一度白焼きして乾燥させた後に甘露煮にすると川魚独特の風味があって美味。

オイカワのあんま釣り

オイカワのあんま釣り

川魚に被害を与えるカワウ

川魚に被害を与えるカワウ


カワムツ

カワムツ