【背景・ねらい】

   伊豆諸島の漁業にとって重要な魚種であるタカベの持続的な利用を目的として、島しょ農林水産総合センター大島事業所では、タカベ資源のモニタリング調査を実施しています。各島の漁獲報告から2015年の漁獲状況の取りまとめを行ったところ2014年に引き続き低い水準にとどまりました。そこで、調査船「みやこ」・「やしお」の定線観測や、各島定地水温観測の結果から、タカベ漁期の海況を把握し漁況との関係について考察しました。

 

【成果の内容・特徴】

① 漁獲量の年変動と2015年の漁獲量

 タカベは、大島から御蔵島までの伊豆諸島北部海域で、刺網漁業や定置網漁業によって漁獲されています。2001年ころまでは年変動はあるもののほぼ横ばいで推移していました。近年は徐々に減少傾向にあり、2014年は46.8tと最も少ない漁獲量となりました。2015年は、2014年をやや上回ったものの、50.7tにとどまりました(図1)。

② 2015年累積漁獲量の推移 

   伊豆諸島北部海域の累積漁獲量の推移を図2に示しました。漁期初めから6月まではほぼ平年並の漁獲量で推移していましたが、7月以降の漁獲量が平年を下回りました。2015年の漁獲量が低水準にとどまった要因としては、7月、8月の漁獲量が平年よりも少なかったことが影響していることがわかりました。

③ 7月以降の海況経過

 調査船「みやこ」、「やしお」の定線観測では、7月以降の伊豆諸島北部海域は黒潮の北上に伴い、水温が6月と比較して大きく上昇するとともに、広い海域で北東方向への速い流れが観測されました。各島の定地水温からは、6月末から7月上旬にかけて、伊豆諸島北部海域の水温が急に上昇したことがわかりました(図2)。

 

【成果の活用と反映】

   2015年のタカベ漁況は盛漁期となる7月に黒潮流路が北上したことにより、①漁場の潮が速く、操業に支障が出た、②水温の急激な上昇によって群れの形成に影響を与えた、③黒潮系水の流入によって、群れの逸散が起こったことにより平年を下回る結果になったと考えられました。

                                       (瀧口 香穂)

 

2015年伊豆諸島北部海域におけるタカベ漁期の海況