外見だけでハマトビウオの雌雄判別が可能となりました。産卵のために来遊するハマトビウオを漁獲している八丈島では、漁獲物に占める雌の割合は極端に少なく、これまでは、開腹により、生殖巣を確認しなければ雌雄判別ができなかったため、漁獲物の雌雄比や雌雄別の体長組成を把握することは困難でした。今回、外見で雌雄を見分けることが可能になったことで、雌雄判別個体数が飛躍的に増加し、容易に雌雄比や雌雄別の体長組成が把握できるようになりました。
ハマトビウオ漁は伊豆諸島における主要漁業の1つですが、年による好漁不漁の変動が大きく、その原因を明らかにすることが長年の懸案でした。そこで、過去100年近くにわたる漁獲統計を解析した結果、ハマトビウオの漁況が20年前後の周期で変動すること、またその周期は北太平洋規模の海面水温変化と密接に連動していることが見えてきました。
島しょ農林水産総合センターがこれまでにまとめた知見で、黒潮が直進する海況時の八丈島周辺海域ではキンメダイ卵の分布密度が低くなる報告があります。今回、伊豆大島からベヨネーズ列岩までの海域におけるキンメダイ卵の分布特性を調べ、海面高度平均場付近にキンメダイ卵が偏って採集される特徴があったので報告します。
造成後6年以内の築いそ漁場を対象に、正確な位置を把握するとともに、漁場環境調査を実施しました。得られた調査結果について、速やかに関係機関に提供し、一部の漁場では、トサカノリ※3漁の操業に、寄与することができました。また、各漁場の位置情報及び調査結果等について、容易に検索・抽出ができるように、GISソフトを用いた「築いそ漁場データベース」を作成しました。
生産現場での漁業特性に応じた、鮮度保持に関する技術や、出荷方法などの検討を行いました。その結果、鮮度を保持できる時間を長くする方法が分かりました。得られた成果は「高品質保持マニュアル」に取りまとめました。
キンメダイの商品価値は、鮮度のみならず体色の鮮やかさにおいても評価されます。そこで、体色の改善及び漁業現場における普及を念頭においた貯蔵・出荷方法を開発し、この方法により2日間保管したキンメダイの体色と鮮度を評価しました。その結果、体色は光沢のある赤橙色に改善され、鮮度も魚肉の生食の目安といわれる条件を十分満たしていました。
八丈島の郷土料理「ブド」の原材料となる海藻「カギイバラノリ」の安定供給を図るため、養殖技術の開発に取り組みました。室内培養実験でカギイバラノリの生長に必要な環境条件を調べ、さらにフラスコ内で胞子を得ることに成功しました。屋外水槽での培養実験では、天然藻体を母藻とした施肥培養を行い、藻体を短期間で効率よく増やすことができました。
アカハタ稚魚を生産するために、飼育水槽へは換水をせず、餌となる動物プランクトン(ワムシ)は飼育開始時に一度だけ給餌し、その後は毎日ワムシの餌となる植物プランクトン(ナンノクロロプシス)だけを飼育水槽に加える「ほっとけ飼育」を行いました。飼育水槽内では大小様々な大きさのワムシが増殖し、アカハタは食べやすい大きさのワムシを選んで摂餌しました。さらに、天然ミネラル(貝化石粉末)を毎日散布することで、良好な水質を維持でき、底掃除も不要になりました。この方法でアカハタ稚魚の安定生産に成功しました。
近年、多摩川に100万尾を超えるアユが遡上し、漁業関係者をはじめ広く一般からも注目を集めています。一方で、これまでの調査から堰等の構造物に設置されている魚道の中には十分に機能していないものがあり、アユの遡上阻害要因にもなっています。そこで、アユをスムーズに上流まで遡上させるために、既存構造物に影響を及ぼさない簡易魚道を開発します。
2007年11月、三宅島の定置網に水温観測機器が設置され、4年が経過しました。今回、水温と定置網漁獲量データの両方が揃っている2008年と2009年の5から8月期について解析したところ、期間中63トンの漁獲があり、そのうちアジ類とブリ類が83%を占めていました。水温変動と漁獲量との関係では、ブリ類中最も多いカンパチについて、漁獲量が多い日に水温が下降する傾向が見られました。