【背景・ねらい】

 新たに造成した漁場は、漁業者にとって操業経験のない漁場であり、特に造成初期では、その利用が敬遠されがちです。しかし、国庫補助等を活用した漁場造成では、事後について一定の生産実績や科学的な評価が求められています。

 そこで、造成後6年以内の築いそ漁場を対象とした、漁場環境調査の実施を事業化しました。調査により得られた情報を、操業の際の資料として活用してもらうとともに、科学的な評価に向けての調査結果の管理を図ります。

【成果の内容・特徴】

  1. 漁場位置の情報整理

 造成漁場の位置情報は、基準とする測地系の変更等により、混乱していました。そこで、調査対象の築いそ漁場については、潜水探索も行い、改めて、漁場位置を特定しました

  1. 漁場環境調査の実施

 対象漁場では、生物の生息状況及びその環境について調査を実施し、大島の築いそ漁場では、トサカノリが海底を覆い尽くす程繁茂していることが確認されました(図1)。そこで速やかに、漁協に連絡したところ、トサカノリ漁の操業に至り、本漁場のみで3トンの水揚げがありました(図2)

  1. 築いそ漁場データベースの作成

 整理した位置情報及び調査結果を入力した「築いそ漁場データベース」を作成し、GISソフト上で利用できるようにしました(図3)

【成果の活用と反映】

 築いそ漁場データベースの作成により、各漁場の状況について容易に検索・抽出が可能となります。また、GISの利用により空間解析が容易になり、より有効な情報の提供を行えるようになります。また、調査結果は、操業の際の参考になるほか、漁場造成効果の検証や自然災害等の漁業被害評価等の際の資料として役立てられます

※1地理情報システムの略。空間的な位置データを伴う情報をデータベース化し、検索、空間解析、表示などを行う情報システムを指す。

※2岩石などを沈めて造った人工の漁場

※3刺身のつまやサラダに用いられる海藻

(高瀬智洋)

図1 図2

図1 繁茂するトサカノリ(大島の築いそ漁場)  図2 トサカノリの水揚げの様子

  1m2当たり2949 g(湿重量)を記録

図3

 図3 築いそ漁場データベース起動画面(一例)

左上ウィンドウ:築いそ漁場の位置情報(緯度経度WGS84)

中央ウィンドウ:電子地図上にプロットされた築いそ漁場

 右上ウィンドウ:検索で呼び出した水中写真

右下ウィンドウ:検索で呼び出した海藻標本写真