【背景・ねらい】

 キンメダイは、九州南方から北海道南部にいたる太平洋沿岸から南西諸島、伊豆・小笠原諸島など起伏のある海底に広範囲に生息する底生性魚類です。島しょ漁業におけるキンメダイの重要性は年々増しており、平成21年には年間990t、全漁獲量の約30%を占めています。島しょの漁業者は、キンメダイ資源の持続的利用を図っていくため、関係県と共同で資源管理に取り組んでいます。そこで、資源管理を効果的なものにするため、キンメダイの生活史などの資源生態の解明に関する科学的データの収集に取り組みました。

【成果の内容・特徴】

  1. 平成23年5月から10月、大島からベヨネーズ列岩までの海嶺上8測点における表層曳から、キンメダイ卵採集数のバブル図を海面高度分布図に重ね、採集数が多かった7月から9月までの特徴を分析しました。
  2. 表層におけるキンメダイ卵の出現は、黒潮が直進する大島・ベヨネーズ列岩間で、黒潮内側域と沖合域の海面高度平均場付近に集まっていました(図1から4)。
  3. 表層曳でキンメダイ卵が多かった7月~9月の内、8月と9月に定量化できる改良型ノルパックネット垂直曳でもキンメダイ卵が採集され、単位面積(1m2)当たり8月(青ヶ島)で30粒、9月(青ヶ島)で43粒、9月(ベヨネーズ列岩)で13粒の分布密度を算出しました(図5)。

【成果の活用と反映】

 海面高度平均場付近にキンメダイ卵が多く集まることに着目し、黒潮が蛇行して伊豆諸島海域を北上する場合の海面高度分布の特徴を把握します。今後も、伊豆諸島海域におけるキンメダイ卵稚仔の出現状況を把握し、キンメダイ未成魚の保護に役立てる調査結果を蓄積していきます

※海面高度平均場:全地球を範囲として粗い精度で推定した平均海面のこと。ちなみに、日本地図の標高は、東京湾の平均海面を基準にしています。

(千野 力)

図1から4

 

図5

 図5 キンメダイ卵の分布密度