【背景・ねらい】

 多摩川でのアユの遡上状況を把握するために、ガス橋上流に定置網を設置してアユを捕獲し遡上数を推定しました。また、日野用水堰(河口から45.2 km)で、6月21から30日に土のうを用いた簡易魚道の設置試験を行いました。さらに、簡易魚道の効果を把握するため、魚道上流部に小型定置網を設置して遡上する魚類や甲殻類を捕獲しました。

【成果の内容・特徴】

  1. 遡上数調査:3月24日から5月29日の間のアユの採集数は422,820尾で、推定遡上数は約783万尾となり、遡上数は調査開始以来最高数を記録しました。(図1 , 2)。
  2. 簡易魚道設置試験:高さ1.2 mの堰に1/3程度の勾配になるように、土のう(白色)を扇型に積み上げました。土のうを積む際に、補強のために表面にはガラ袋(茶色)に土のう袋2つを収容して使用しました。この簡易魚道は人員8名で5時間かけて完成しました。使用資材は土のう袋385枚、ガラ袋89枚でした。撤去には人員6名で3時間かかりました(図3,4)。
  3. 簡易魚道効果調査:小型定置網を設置した5日間に簡易魚道を遡上した生物は、6科10種の魚類と3種の甲殻類で、合計3,178個体が定置網で採集されました。(表1)このうちアユが最も多く2,827個体が採集されました(図5,6)。遡上したアユの全長は61から194 mmで平均は96 mmでした(図7)。また、採集されたアユの中にガス橋付近で標識放流したアユが2個体確認され、天然アユの遡上が確認されました。

【成果の活用と反映】

 構造物に影響を与えることなく簡易な資材で魚道を作成することができました。しかし、構造物によって条件は異なります。今後はこの簡易魚道を各構造物に適合するよう改良を行う必要があります。また、アユが滞留することなくスムーズに遡上することができれば遡上範囲が拡大し、さらにアユが上流の良好な藻を食べることにより再生産にも好影響が及ぶと考えられます。

(前田洋志)

図1 図2

図1 ガス橋におけるアユ入網数と水温変化 図2 多摩川におけるアユの年別推定遡上数

図3 図4

 図3 日野用水堰での簡易魚道設置作業   図4 完成した簡易魚道

図5 図6

図5 簡易魚道を遡上するアユ(点線内)   図6 簡易魚道を遡上したアユ

 

表1 簡易魚道を遡上した生物

表1図7 

                      図7 簡易魚道を遡上したアユの全長組成