【背景・ねらい】

 キンメダイは伊豆諸島で最も生産額が多い魚種であり、「東京ブランド水産物」にも選定されています(ブランド名:きんめだい)が、生産現場においては、高品質化に対する取り組みが十分とはいえません。そこで、島しょ漁協におけるキンメダの貯蔵・出荷の現況を科学的に評価・検証した上で、高品質化を図るための技術開発に取り組みました。

【成果の内容・特徴】

  1. 魚体の取り扱いや、キンメダイを貯蔵する水の塩分などが体色に与える影響に関する実験を行いました。その結果、ア)体表が擦れないように扱う、イ)速やかに冷海水中に貯蔵する、ウ)冷海水の塩分を低下させない、の3点がキンメダイを色良く貯蔵するために大切な条件であることが明らかになりました。 カギイバラノリの生長に適した環境条件(水温、光の強さ、必要とする栄養)を調べたところ、水温18℃から27℃、光強度100μmol/m2/s以上、栄養は硝酸態窒素を培養液500mlあたり25μmol以上与えることで良好に生長することがわかりました(図2)。
  2. 実験結果を踏まえ、新たな貯蔵・出荷方法を開発しました。この方法では、まず、釣獲したキンメダイを一定量の冷海水とともに専用の袋に収容し、そのままの状態で水揚げします(図1)。次に、水揚げ後はこの袋を密封して出荷します(図1、2)。また、既存のコンテナを活用できることや、魚を水から出さずに計量できるという利点もあります。
  3. この方法により2日間保管したキンメダイの体色と鮮度を評価しました。その結果、従来の保管方法と比較して、体色が光沢のある赤橙色に改善されました(図2)。また、鮮度(K値)も魚肉の生食の目安といわれる条件(20%以下)を十分満たしていました。
  4. 生産現場が本研究の成果を品質管理に活用できるようにするための「高品質保持マニュアル」を作成しました。

【成果の活用と反映】

 新たな貯蔵・出荷技術の導入により伊豆諸島産キンメダイの高品質化および市場価値の向上が期待できます。今後は高品質保持マニュアル等による現場への普及を図ります

(滝尾健二)

図1

図1 キンメダイの貯蔵および出荷方法(上:従来の方法 下:新技術)

図2

 図2 異なる出荷方法における2日後の体色と鮮度(K値)の違い