最先端の音響機器を用いて、伊豆諸島におけるキンメダイの魚群量と行動特性を調査しました。その結果、キンメダイの鉛直日周行動、すなわち日中は海底付近に分布し、夜間小型魚ほど大きく浮上する行動が確認されました。一方、成長生残モデルを用いた解析から、キンメダイ資源を有効活用するには、漁獲開始年齢を現状より引き上げることが望ましいことが分かりました。そのためには小型魚が多く分布し、かつ釣られ易い浅場漁場を保護することが、資源管理方策として有力であることが示唆されました。
島しょ農林水産総合センターでは、伊豆諸島の重要資源であるキンメダイの初期生活史を探るため、漁業調査指導船「みやこ」により大島から鳥島までの伊豆諸島海域を主としてプランクトンネットによる調査を行っています。調査の結果から、伊豆諸島海域において、キンメダイ漁場に近い測点で採集卵数が多く、8月から9月にかけて採集率が高いことが分かりました。また、黒潮内側域での卵の採集率が高いことが分かり、今後のキンメダイ卵稚仔調査への知見が得られました。
大島事業所では、沖ノ鳥島海域から伊豆諸島に至る東京都海面の、水産資源から見た連続性を把握するため、様々な調査を行っています。その中の一つに、プランクトンやマイクロネクトンと呼ばれる、遊泳力の小さい生物を採集する調査が含まれています。これらには、有用水産種の仔稚魚や、生態系ピラミッドの底辺を支える重要な生物が含まれています。今回は、IONESSと呼ばれる網を用いた調査の結果を紹介します。
島しょセンターでは、これまでテングサやカギイバラノリなど、伊豆諸島における有用海藻を対象とした人工採苗技術の開発を行ってきました。この技術を応用し、トサカノリの効率的な採苗方法について検討しました。また、人工種苗を天然海域へ移植することを目的に、胞子が着生しやすい基質について検討しました。
小笠原諸島におけるアカハタは、代表的な漁業対象種であるとともに、遊魚でも人気の高い重要な水産資源です。しかしながら、近年、資源の減少が懸念されてきたため、適切な資源管理が必要となってきました。そのため、当センターでは、地元漁協のアカハタ水揚量と、父島沿岸域で採集したアカハタの計測および耳石や生殖腺(精巣や卵巣)の観察から、成長、寿命、成熟年齢、産卵期、漁獲開始年齢、漁獲尾数などの資源管理に必要な知見が明らかになりました。
八丈島においてカツオ曳縄漁は基幹漁業の一つですが、海況の変化などにより、近年、不漁が続いています。そこで、漁場予測精度の向上を図るため、カツオの行動把握調査を実施しました。これまで、回遊経路等を把握するために、標識放流を実施してきましたが、平成27年から新たに電子標識(水温、水深、体温、照度を記録)を導入し、遊泳水温や水深等に関するデータが得られました。
ゴマサバ、クサヤモロはともに刺身として食べることができますが、伊豆諸島でゴマサバはほとんど利用されず、クサヤモロは地元で一部が利用されています。今回はゴマサバやクサヤモロの生食での利用を広げていくため、漁獲後の鮮度変化について科学的検証を行いました。その結果、ゴマサバは漁獲5日後まで、クサヤモロは漁獲4日後まで刺身で利用できることがわかりました。
東京都では、マス類養殖において死亡率の高いウイルス性疾病IHNの被害低減対策として、1989年から抗病系品種の作出を試みています。IHNウイルスを人為的に感染させ、死亡率の低い群を親魚まで育成し、次世代を選抜していきました。その結果、8代選抜育種を行った系統では、未選抜群に比べて死亡率の低下がみられてきました。
東京湾から遡上する「江戸前アユ」は、多摩川下流域の調査では平成18年以降、毎年100万尾以上遡上していると推定されています。そのアユが中流域をどのくらい遡上しているのか、どこに遡上を阻害する要因があるのか、3年間にわたり調査しました。その結果、中流域の昭和用水堰ではおおむね1万~3.5万尾が遡上していることがわかりました。また、十分機能していない魚道などの遡上阻害要因を把握しその改善にむけた提言を行なった他、堰下で滞留しているアユを簡易な手法で遡上させることに成功しました。