【背景・ねらい】

   東京都の重要資源であるキンメダイは、今までの調査から、多くの漁場を有する伊豆諸島海域が主要産卵場であることが明らかになってきました。しかし、初期生活史や漁場への加入機構についてはいまだ未解明な点が多く、資源評価の課題です。本研究では平成18~28年までの、大島から鳥島までの10測点(図1)における表層曳きネット(リングネット)による採集データをまとめ(表1)、キンメダイ卵(写真1)の分布特性について推定しました。

 

【成果の内容・特徴】

①  キンメダイ卵の採集数と月別採集率

  キンメダイの産卵期と考えられる6~10月に計440回の調査を行いました。測点別の1曳網当たりの平均採集卵数において、500粒以上採集された測点は、7月に三宅北、黒瀬、青ヶ島、8月に黒瀬で、それぞれキンメダイ漁場に近い測点でした(図2)。また、月別採集率(採集回数÷調査回数)は、6月が14%、7月が27%、8月が35%、9月が44%、10月が13%と9月が最も多い結果となりました(図3)。

② 黒潮流路とキンメダイ卵の出現状況

    黒潮流路の内側と外側に分けた月別採集率(内側/外側)は6月が11%/4%、7月が15%/13%、8月が26%/9%、9月が33%/11%、10月が8%/5%と全ての月で内側域が高い結果となりました(図3)。

  

【成果の活用と反映】

   キンメダイは、成魚が分布する各漁場で産卵が行われていると考えられ、多くの漁場が存在する伊豆諸島海域において、産卵場が黒潮内側域にあたる場合に卵が滞留し、採集頻度が高くなることが示唆されました。

 本調査で得られたキンメダイ卵の分布特性を活用し、調査指導船「みやこ」に搭載された大型プランクトンネット(LCネット)等を利用することで、採集例がわずかな稚仔魚の効率的なサンプリング技術の確立を目指します。

 

(諸岡 岬)

 卵稚仔調査結果より