【背景・ねらい】

 ゴマサバは、九州では刺身としてよく利用されていますが、伊豆諸島ではあまり利用されていません。また、クサヤモロはくさやの原料として利用することが一般的ですが、近年の住宅事情などからくさやとしての需要は限られています。これらの魚の需要を拡大していくためには生食による利用の普及がカギになると考えられますが、そのためには漁獲後に刺身で賞味できる期間を科学的に明らかにする必要があります。そこで、これらを冷蔵庫内で氷蔵した際の鮮度(K値)を、鮮度計(写真1)を用いて測定しました。

 

【成果の内容・特徴】

① 平成28年3月13日に八丈島・底土港で釣獲したゴマサバの首を折って八丈事業所で氷蔵し(写真2)、漁獲5日後までのK値を測定したところ、刺身として賞味できる目安であるK値20%を5日後でも下回ることが明らかになりました(図1)。

② 平成28年10月20日に漁業調査船「たくなん」で漁獲したクサヤモロを氷蔵し、漁獲後8日後までのK値を測定したところ20%を超えたのは漁獲5日後でした(図2)。

③ 平成28年 12月12日に八丈漁協所属漁船が漁獲したクサヤモロを宅配便により八丈島から東京・浜松町にある島しょ農林水産総合センター本所へ氷蔵輸送し、漁獲4日後にあたる12月16日にK値を測定したところ、八丈事業所内で氷蔵した際の結果(16.4%)と同等の値(15.8%)が得られました。

  

【成果の活用と反映】

 今後も漁業関係者のご意見を伺いながら、このような低未利用魚の需要拡大に向けた取り組みを継続していきます。

(東元俊光)

 


※K値 筋肉中に含まれるエネルギー源のATP(アデノシン三リン酸)は魚の死後、ATP→ADP(アデノシン二リン酸)→AMP(アデニル酸)→IMP(イノシン酸)→HxR(イノシン)→Hx(ヒポキサンチン)の順に分解が進みます。ATP分解生成物の全体に対するイノシンとヒポキサンチンの割合はK値と呼ばれ広く鮮度の指標として用いられています。一般的にこの数値が20%までは刺身として適当とされています。

ゴマサバとクサヤモロの鮮度試験